「日本人にとっては慣れない文化だろうし、アナタには受け入れがたいかもしれない。そう思うと、どう説明すればいいのか、ずっと考えていたんだ」
あの時、インド旅行の前に彼が言っていた「秘密にしておけば、きっとうまくいく」という言葉の意味が、ようやく腑に落ちた気がした。彼は、自国の文化と私との関係の間で、二人の将来のために何が一番良いのかを真剣に考え、気遣いながら行動してくれていたのだ。
驚きはしたけれどその真意がストンと胸に落ちた私は、疑ってしまったことを後悔したと同時に、彼の優しさを感じたのだった。そしてまたひとつ、カルチャーショックという壁を、二人で乗り越えることができたと思えた。
ひとつでも正解を確認したくて仕方なかった
今ではもう結婚しているのだから、義家族に交際期間や同棲のことを話してもいいんじゃないか、とも思う。実のところ、すでにバレている可能性は高い。
それでも義家族はそのことをあえて聞いてこないし、彼もわざわざ話題にしない。そんな様子を見ていると、すでに「暗黙の了解」になっているのかもしれない。
今思えば、あの頃の私は、何かひとつでも正解を確認したくて仕方なかったのだ。
「本当に彼は私のことを大切に思ってくれているのか」「この先、一緒に進んでいけるのか」......そんな不安を、家族への紹介や「肩書き」で補おうとしていた。
けれど今は、何か一つの正解や模範解答を見つけて、そこに自分たちを当てはめなくてもいいのだと思えるようになってきている。
文化の違いとしかうまく言えないような部分があるからこそ、すべてを同じ感覚で見たり、同じ基準や常識で判断したりできるわけではないだろう。だからこそ、思いつく正解の形や模範解答を追い求めるよりも、彼との時間の中で少しずつ育っていくものを大切にしていきたいと思うのだ。
インドという文化の中で生まれ育った彼と、日本という全く違う土壌で育った私が、一緒に生きていくということは、いつだって「分かり合えないかもしれない」と思う瞬間との戦いでもある。
こんなふうにいい感じに書いているけど、喧嘩をする日だってある。でも、その分かり合えなさを前提にして、歩み寄ったり、待ったり、信じたりできるようになった時、関係はもっと強くなっていく。
「秘密の関係」があったからこそ、今の私たちがある。すれ違い、疑って、悩んで、それでも手を離さずにいたあの時間が、今の私たちの土台になっている。そうやって築いてきたもの全部が、今の「私たち」なのだと思う。

インド嫁1年生、異国生活奮闘記
2026年4月20日
定価 1870円(税込)
KADOKAWA
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