辞めたらどうなるんだろうって頭によぎる
――ずっと「好き」を貫いてらっしゃるのも素晴らしいですよね。
久本 でも悩む時もありますよ。もう仕事を辞めて、ゆっくりしたいなと思う時もあります。辞めたらどうなるんだろうって頭によぎる。でも私、これしかやってこなかったので、今社会に出て通用するのかっていったら難しい。やっぱり自分にはこの仕事しかないのかな、いやでも変な話、ショップの店員やれって言われたらめちゃめちゃ洋服売る自信はあるぞ、とか(笑)。でもそんな甘くないですからね、社会は。
――コメディエンヌではない自分を想像することもあるんですか?
久本 具体的には考えないけど、よぎるときはありますよ。体が動かなくなったらどうしようかなとかごはんが食べられなくなったらどうしようとか。疲れてるときはダメですよね。私なんかもう全然ダメだ、もうほんとダメだって落ち込んだ時は余計にそういうことを考えてしまう。じゃあ何できるんだろう自分にって。
――それでも45年、ずっと駆け抜けてこられた原動力はなんだったのでしょうか。
久本 製作発表のような場でもいつも思うのが、「自分はちゃんとこの舞台で面白くできるんだろうか」「自分の役割を果たせるのだろうか」という緊張なんです。今もそうです。オファーをいただくと、「お応えできるんだろうか、自分の使命を果たせるんだろうか」と思っちゃう。
ビビリなんでしょうね。真面目なんでしょうね。超真面目。原動力は何かと言ったら、やっぱりお客さんの笑い声なんですよ。どんなに疲れていても、しんどい時でも、舞台に出てお客さんがドーンって笑ってくれたら、さっきまでのしんどさがスカーッとなくなります。
先輩方もよく仰いますけど、喜劇というのはお客様の力で作られていくんだなってほんと実感していますね。お客さんの笑いによって、間も動きも言い方も、初日からどんどん変わっていく。本当にお客さんによって作っていただいているなと思います。笑いたいと思ってきているお客さんと、笑っていただいてありがたいと思う私と、エネルギー交換しながら……その繰り返しかなと思いますね。
――ではお客さんの笑顔がある限り、久本さんに引退なし、ですね(笑)。
久本 みなさんに「久本歳取ってもできんじゃん!」って言ってもらえるように、これからも頑張りますよ(笑)。70になっても、80になってもやってるよって伝えたい。だって、今回共演する波乃久里子さんもすごいじゃないですか。石井先生なんて、今年100歳ですからね。パワーが違う。私も皆さんが元気になれる存在でいられるよう、努力していきたいと思います。
久本雅美(ひさもと・まさみ)
1958年7月9日生まれ、大阪府出身。WAHAHA本舗の看板俳優として活躍し、その明るいキャラクターと巧みなトークでバラエティ番組のMCとして親しまれる。代表作に『メレンゲの気持ち』、『秘密のケンミンSHOW極』など。
公演情報
新派・松竹新喜劇 合同喜劇公演
会場:新橋演舞場
日程:2026年5月9日(土)~19日(火)
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202605_enbujo/
