最大の違いは「男女の家事分担」だった
アグネス データを集めるのが大変でした。ネットなどない時代で、しかも、文章で自分の場合について書いてもらうアンケート形式だったので、回答を読み分析していくのに時間がかかりました。
上野 気が遠くなるような作業ですね。
アグネス 女性の場合、なぜ途中で仕事を辞めたのかという質問に、文章が長くなってしまうケースが多かったです。たとえば、仕事を辞めた理由についても、夫の転勤とか子どもが生まれたといった事情や、仕事を止めたことを後悔しているということ、その理由が綴られていて、読みながら泣けてくるようなものもたくさんありました。夫と同じように学んだのに、彼は最初から大学の教員として雇われ、自分はずっと研究員の扱いだったとか。
上野 夫より自分の方が成績がよかったのに待遇は下という女性は珍しくありませんが、もしあの時、寿退社しなかったら......と考えたところで時間は巻き戻せません。それがわかるだけ切ないですよね。調査で聞かれるまで、誰にも言えずにいた人もいたかもしれません。アグネスさんから調査の依頼を受けて、堰を切ったように心情を吐露した人もいただろうなと想像します。
アグネスさんの研究では、「あらゆる点を考慮すると、スタンフォード大卒学生は東大卒学生よりもはるかに平等だった」という結論ですが、「いくつかの点ではどちらの卒学生もほとんど変わりがないことがわかった」と。両大学の「最大の違い」は家事分担をめぐるジェンダー間の違いだとあって、やっぱり、と思いました。日本の東大卒の男は家事分担していないのです。女性間の違いより、男性間の違いが大きいために男女格差が大きくなるのですね。
このことについては、最近でも、東大で教育社会学を教えている本田由紀さんらの共著、2025年に出版した『「東大卒」の研究』(ちくま新書)でも触れられていて、未だに状況は変わっていないことが浮き彫りになっています。
アグネス そうなんですか!
上野 アグネスさんが調査をした当時、東大卒の働く男女の収入は、日本の平均賃金より上だけれど、男女間の格差が極めて大きく、年齢が上がるほどどんどん格差が広がるという結果でしたね。今でも結果は同じです。
アグネス そうです。あれから40年近く経っても状況が変わっていないというのは残念ですね。今、大きなショックを受けました。

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