スタンフォード大卒女性と東大卒女性の違いは?

上野 学位論文が日本語訳されて『この道は丘へと続く』というタイトルで出版されています。私はタイトルからアグネスさんのエッセイだとばかり思っていました。そのせいで読む機会を逸しました。どうしてこんなタイトルにしたの?

アグネス 「この道は丘へと続く」というのはマイラ教授の好きな言葉なんです。女性の歩む道は上り坂に続く上り坂であり、まだまだ続くというような意味です。

上野 女性が社会の中で報われる日は遠いということですね。スタンフォード大学と東京大学を卒業した女性達のアンケートをもとに、その後を追った素晴らしい実証研究でした。読んでみて私は、これは貴重なデータだと驚嘆したのですが、なぜこのテーマを選んだのかが気になりました。アグネスさんなら「芸能界とジェンダー」といったテーマでもよかったのではありませんか?

アグネス 私は教育学部なので、教育に関するテーマの論文でなければいけないという縛りがあったのです。

上野 そういうことですか。納得しました。

アグネス 最高学府といわれる東大を卒業した日本女性が、日本社会の中で男性と同じように活躍できるのかどうか、家庭内では平等な立場にいられたかということに関心がありました。

上野 スタンフォード大卒業生1000人と東大卒業生1000人を対象に、比較研究しています。なぜ、このようなことができたのですか?

アグネス 実は、スタンフォード大のデータはマイラ教授に協力してもらいました。東大のデータは、当時卒業生の名簿を入手することができたので、それを見て一人ひとりに調査に協力してほしいと手紙を書きました。ただ、東大は女性の数が少なくて......。男性の卒業生は過去1年分、女性の卒業生は過去3年分の方にお願いしました。

上野 なにしろ女子学生比率2割の壁を越えませんから。当時は個人情報の管理がゆるやかで、東大卒業生の名簿が出回っていた時代です。今なら調査倫理の問題もあって、それだけの数のサンプルにアクセスするのが難しいですね。

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