ある日突然、「バズってますよ」と連絡が…
三宅さん 彬子さまのこの留学記を私が手にしたきっかけは、Xでいろんな人が感想を挙げていて、それを読んだことなんです。彬子さまご自身は、Xでバズったり、書店に文庫が並ぶようになったことをどう感じていらっしゃいますか。
彬子さま ある日突然、「バズってますよ」という連絡が来たんですね。なんでこのタイミングでというのと、きっかけはインフルエンサーの方ではなくてドイツ在住の日本人の方だったので、それも不思議な気持ちでした。
ただ、やはり、書いておくことによって、何か残しておくことで発展することがあるんだなと。たとえば伊藤若冲なんかも、ちょっと前の日本の美術市場ではあまり評価されていなかったのが、日本美術蒐集家のジョー・プライスさんが地道に集め続けた。やはり残していたからこそ発見していただけたわけですね。自分が美術史を学ぶ中で体感してきた世界を、まさか自分が味わえるとは思ってもいなかったです。
三宅さん たとえば古典も、一度戦国の時代に読まれなくなっても、また江戸で読まれるようになったり、そういうのは文化芸術の、言葉の面白さだなと思うんです。
『赤と青のガウン』も、現代、それがまたXという形で、何か受容史がまた発展するというのが……それで文庫本になって、マンガになって、また新たな受容史が生まれるということ自体が、文芸の中でも、最先端で面白いと思うんですよ。
さらに、バズったことによって、文庫本を出す道筋ができて、マンガにもなって。
彬子さま そう言えば、去年かな一昨年かな、実際につぶやいてくださった方とお目にかかることもできました。いちツイートからつながりが生まれるというのが「令和だな」と思いましたし、夢物語のようなことを実際に体験しました。
書店の方にお伺いすると、文庫は圧倒的に40~50代の女性の方が買っていかれているらしいんです。マンガの編集担当者さんからは「マンガ化すると対象年齢が10歳下がります」と聞いたので、もう少し若い世代の方にも読んでいただけたらいいなと思っています。
留学についても、いまは円が強くないので難しい時代ではあると思うのですが、やはり海外に出て実際にたくさんの人たちと交流することで得られるものは、英語を習うアプリからでは得られないものがあるので、「海外で勉強してみようかな」と思うきっかけになってくれればいいなと思います。
三宅さん オンラインが発達したことによって、英語でもなんでもどこでも勉強できる時代ではありますが、このエッセイの本当に素敵なところは、海外に行って失敗も含めて描かれている部分だと思うんですね。失敗というか、海外でいままでの自分ではなくて変わる、成長する、そういうのも面白そうだなと思う読者も多いんじゃないかなと。
彬子さま そうですね。日本人は「失敗したくない」意識がすごく強いというか、英語もわからないわけじゃないんだけれど「間違っていたら恥ずかしい」、だから話さないようなところがありますよね。ですが、失敗は成功のもと、こんなことがあったから成長できたんだということが大事かなと。いろいろありましたけれども、隠さないで書いたつもりですし、なんと言っても行ってみないと、やってみないとわからないことはたくさんあります。
三宅さん 最後に、読者へのメッセージをいただけないでしょうか。
彬子さま 『赤と青のガウン』は、私が学生時代の思い出を書き残したものですけれども、こうして20年ほどの時間が経って、あらたな展開になったことをとても嬉しく思っております。マンガを補完するように、本の方も読んでいただけるきっかけになればと思っております。本日は、ありがとうございました。
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『マンガ 赤と青のガウン 第1巻』刊行記念
彬子女王殿下×三宅香帆さんスペシャルトークイベント
登壇者 彬子女王殿下×三宅香帆さん
アーカイブ配信期間 2026年3月26日15:00~4月9日23:59
(販売終了:2026年4月9日 12:00)
オンライン視聴チケット 1,100円 書籍付きオンライン視聴チケット 2,310円
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マンガ 赤と青のガウン 第1巻
新潮社 原作 彬子女王/漫画 池辺葵 1,540円
「命を吹き込むとはこういうことなのかと、ぞくぞくした」(彬子女王)。女性皇族として初めて海外で博士号を取得された彬子女王殿下。一人で街を歩く心地よさと寂しさ、論文に追われた日々、支えてくれた友人たち――英国での苦しくも輝かしき青春を『ブランチライン』の池辺葵が繊細な筆致で描き出す。殿下の特別エッセイも収録。
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文=三浦天紗子 写真=平松市聖


