イ・ビョンホン 私の出演映画をずっと見てきてくれた人は、私がコメディを愛していることを知っていると思います。この映画でのユーモアについて、私はパク監督とじっくり話し合いました。意図的に観客を笑わせようとするべきではないと思ったので。そうしてしまうと、リアルさがなくなりますから。外から見ると笑えても、マンスは深刻で、必死なのです。彼は自分がやるべきだと思うことをやっているにすぎません。演じる私の使命は、そんな彼の心理をしっかり表現することです。

 マンスの馬鹿げた行動を目撃しても、観客にはマンスに寄り添ってもらい、同情してほしい。マンスがやろうとしていることを止めたいと思う一方、応援するような気持ちにもなってほしい。そのためには、私自身がマンスを理解し、愛し、自分のものにしなければなりませんでした。

「日本で、書籍は今も人気なのですよね。すばらしいです」

――マンスが勤務してきたのが製紙会社というところも、現代を映し出しています。デジタル化が進む中、紙を使う機会は減ってきましたね。そういうことに関する思いもあったのでしょうか?

イ・ビョンホン たしかに、紙はどんどん使われなくなってきています。でも、日本に行くと、日本では人が本を読んでいるのをよく目にします。日本で、書籍は今も人気なのですよね。すばらしいです。本屋さんも、日本にはまだありますし。

 とは言え、その日本でも書店の数は減少している様子。出版業界も以前より勢いを失っているようです。DVDを集める人も、昔のようにはいません。そのことを少しさみしく感じます。

パク・チャヌク 現代人が直面している状況について触れるため、私はこの映画に、原作になかったことを足しています。原作が出版された頃、工場で人間の代わりにロボットが使われるようになってきたことに、人は不安を感じていました。でも、当時は、ロボットを管理するために、まだ人間が必要でした。しかし、今では、そういった人材すら要らなくなってきました。機械は自分たちで全部できるのです。

 この映画の最後で、システムが勝手に判断して、照明が自動的に消えます。あたかも、マンスを工場から追い出すように。私はそんな様子を描きたかったのです。

――おふたりが初めて組んだ『JSA』は、2000年の作品。四半世紀の間に、関係はどう変わりましたか?

イ・ビョンホン 26年前は、キャラクターや製作プロセスについてなど、ほとんど直接映画に関係する話しかしませんでした。でも、それからの年月の間に、私たちは兄弟のようになっていき、どの店が美味しいとか、最近見た映画で何が良かったかなどについておしゃべりするようになりました。この映画の製作中にも、人生や世の中について語り合いましたよ。おかげで彼の社会に対する考え方をより深く知ることができました。

 映画が完成してからも、映画祭への出席や宣伝活動などで、一緒にたくさんの時間を過ごしてきています。もしかしたら、今の彼は、私の妻より私のことを知っているんじゃないかとすら思いますよ(笑)。

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映画『しあわせな選択』
3月6日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
配給:キノフィルムズ