人を魅了する、人生そのものを語る本当のラブソング

――続いて、チャン・クォンウィンさんがお好きなイーキンさんが演じられたキャラを教えてください。

チャン・クォンウィン 私は映画『東京攻略』(00年)のユンが頭に浮かびました! 内装デザイナーという役どころだったのですが、どこかミステリアス。ルックスだけでなく、細やかな演技やキレのあるアクション、すべてが魅力的でした。なかでも、薄手の衣装のまま船上から東京湾に飛び込むシーンは、今でも鮮明に覚えています。「寒くないのか?」「やるじゃん、イーキン!」と思わず胸が熱くなりました。彼の作品に対する一生懸命さ、情熱を強く感じることができたキャラクターだと思います。

――長期に渡る東京ロケを敢行し、香港でメガヒットを記録した『東京攻略』ですが、イーキンさんの当時の思い出は?

イーキン・チェン あのときの撮影は、とにかく寒くて、寒くて! ロケ中ではいろんなところにケガもして、今もちょっとした後遺症が……というのは冗談です(笑)。

――『風雲 ストームライダーズ』(98年)の「風雲」、『レジェンド・オブ・ヒーロー/中華英雄』(99年)の「中華英雄」、『超速伝説ミッドナイト・チェイサー』(99年)の「極速」など、チャンさんが作曲した主題歌をイーキンさんが歌われたヒット曲も数多くあります。

イーキン・チェン ありがとうございます。先ほども言ったように、これまでチャンさんとはいろんな映画で共作してきました。以前は香港映画の劇中で主題歌が流れるということが当たりまえだったのですが、ここ十数年の香港映画において、そういった傾向は減っていきました。今回の『ラスト・ソング・フォー・ユー』では、タイトルにもなっているように本当のラブソングが必要不可欠でした。だから、人を魅了する、あるいはその人生そのものを語る歌をチャン・クォンウィンに書いてほしかったんです。正直な話、そのとき彼は体調があまり芳しくなかったのですが、「久別重逢」という本当に魅力的な楽曲を書き下ろしてくれました。それにより、僕らの友情はさらに深まったといえますね。

イーキン・チェン(鄭伊健)

1967年10月4日生まれ。香港出身。87年に俳優デビューし、92年には歌手デビュー。96年に主演した『欲望の街・古惑仔I/銅鑼湾の疾風』が社会現象になり。シリーズ化。そのほか、アーロン・クオック共演の『風雲 ストームライダーズ』(98年)、トニー・レオン共演の『東京攻略』(00年)などに主演。薬師丸ひろ子主演のドラマ「香港明星迷」(03年)や松山ケンイチ主演『カムイ外伝』(09年)にも出演している。現在、Netflixにて主演を務めたドラマシリーズ「殺人予言配信」が配信中。

ジル・レオン(梁禮彦)

1983年生まれ。香港出身。03年に映画界入りし、10年に『復讐の絆 Revenge:A Love Story』で脚本家デビュー。その後、『キョンシー』(13年)、『ドラゴン×マッハ!』(15年)、『SPL 狼たちの処刑台』(17年)のほか、ドニー・イェン主演の人気シリーズ『イップ・マン/継承』(15年)、『イップ・マン/完結』(19年)の脚本も手掛ける。『ラスト・ソング・フォー・ユー』(24年)で監督デビュー。

チャン・クォンウィン(陳光榮)

1967年6月15日生まれ。香港出身。88年にロックバンド「Fundemental」メンバーとしてデビューする傍ら、さまざまなアーティストに楽曲を提供。1992年からのイーキン・チェンへの楽曲提供で注目を浴び、彼が主演した『風雲 ストームライダーズ』(98年)のほか、『孫文の義士団』(09年)、『捜査官X』(11年)など、数多くの映画音楽も手掛けている。

『ラスト・ソング・フォー・ユー(久別重逢)』

ミュージシャンのセンワー(イーキン・チェン)は、体調を崩し運び込まれた病院で、かつて自作の曲を聴かせたり、夜通し長電話をしたり、共に青春を過ごした女友だちマンフィン(セシリア・チョイ)と再会する。だが、再会からほどなくして、彼女の訃報が届く。葬儀の後、センワーのもとに彼女の娘と名乗る少女(ナタリー・スー)が現れる。