静かな空間で日本の美意識を満喫

生菓子や落雁、最中、羊羹など、豊富な和菓子がセンスよく並ぶ「売店」。

 蘊蓄はさておき、ヒガシヤが最も大切にしているのは、「日本が誇る菓子の文化を、現代の暮らしに馴染む“ちょうどいい”存在にしたい」ということ。「ヒガシヤ」という名前の由来は、デイリーユースな日々の菓子屋が“日果子屋”に転化したものだそう。

 銀座一丁目のポーラ銀座ビルの2階にある「ヒガシヤギンザ」は、お茶を楽しむ場所としてはデイリーユースというよりワンランク上の雰囲気ですが、売店に並ぶお菓子は気取りのないものばかり。たとえば冬の定番「柿衣」は、長野県産の甘い干し柿に白餡とバターをはさんだ、素朴な味。口溶けのよいバターのほのかな塩味が、干し柿と白餡の甘みを引き立てます。

「豆大福」や「本蕨」などの定番に加え、季節の生菓子も揃う。お盆の中から好きなものを選んで注文できる。「季節のお茶と和菓子セット」は1,600円。
2015年11月8日~12月6日までの朝生菓子「銀杏餅」350円。お茶は釜炒り茶、紅茶、深蒸煎茶の3種をブレンドした「HIGASHIYAオリジナルブレンドNo.4」1,400円。

 茶房で味わう甘味のおすすめは、毎朝作られる生菓子や、オーダーごとに作られる葛切り。たとえば「季節のお茶と和菓子セット」を注文すると、番重に盛られた生菓子のサンプルを見ながら、好みのものを選ぶことができます。2015年12月6日までの「銀杏餅」は、刻んだ銀杏を入れて焼いた生地でこし餡を巻いたもの。銀杏の粒の食感とほのかな風味が、独特の魅力を醸し出しています。

食後の甘味としても人気の「葛切り」1,500円。

 そして定番の「葛切り」は、注文ごとに葛粉を溶いて湯煎にかけて仕上げるという、こだわりの品。なめらかな幅広の葛切りに黒蜜をつけていただくと、繊細な葛の味がします。葛の味がイメージできない方は、ぜひ葛湯の味を思い出してみてください。ほのかな淡い味は、まさに日本的。黒い漆椀の中を半透明の葛切りがたゆたう姿には、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の風情があります。静かな空間で日本の美意識を満喫すれば、右脳もほっこり満足します。

HIGASHIYA GINZA(ヒガシヤギンザ)
所在地 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル2F
電話番号 売店 03-3538-3230/茶房 03-3538-3240
営業時間 売店 11:00~19:00/茶房 11:00~21:00L.O.(日曜・祝日 18:00L.O.)
定休日 月曜(祝日の場合は翌火曜)
URL http://www.higashiya.com/

小松めぐみ (こまつ めぐみ)
東京都生まれ。食い道楽の親の影響で、10代半ばにして料理に目覚める。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。2000年に独立し、主に雑誌で飲食関連の記事を編集している。

Column

小松めぐみの和菓子で和む、ほっこり時間

落ち着いた和の空間で和菓子をいただき、ほっこり和む、幸せな時間。仕事の合間や散歩の途中に、自分の時間を取り戻せる甘味屋さんをご紹介します。

2015.11.11(水)
文・撮影=小松めぐみ