Magnificent View #734
ヴィエリチカ岩塩坑(ポーランド)

(C) Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 磨きぬかれた床や祭壇、輝くシャンデリアと壁に彫られたレリーフ。ここは、塩を採掘するために掘られた坑道跡の一角。一見するとごく普通の礼拝堂だが、これらはすべて、岩塩で作られている。

 岩塩の採掘が始まったのは13世紀のこと。以降、採掘は700年以上にわたって続き、その結果、総延長は約300キロ、最深部は327メートルにも達する広大な地下採鉱場ができあがった。そのうちごく一部が一般公開され、20以上の部屋や礼拝堂を巡る約3.5キロの見学ルートが整備されている。

 内部には採鉱作業の様子が再現されるほか、実際に使われていた梯子やトロッコも展示。ご覧のキンガ礼拝堂は、採掘後の空洞を利用して、ここで働いていた鉱夫たちが作ったもの。彼らは殺風景な地下道に様々な彫刻を施し、地上のぬくもりを地下に再現しようとしたのだという。

 中世、塩は調味料以外にも、食料の保存や医薬品として貴重で、「白い金」とも言われていた。かつては塩の採掘でポーランドに莫大な富をもたらした岩塩坑は現在、世界遺産として人気を集めている。

Column

今日の絶景

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2015.10.04(日)
文=芹澤和美