これは絶望の先で「できることの限界」を知るための物語である
――本作は約30年の時を経て日本語訳が刊行されました。近年、日本で韓国フェミニズム文学が注目されたのは『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著)が記憶に新しいですが、『キム・ジヨン』を読んだ人にこそ薦めたい本作の魅力はなんでしょうか。
『82年生まれ、キム・ジヨン』が刊行される2016年までの間に、韓国ではさまざまな女性作家がさまざまなフェミニズム文学を描いてきました。代表的な作家だと本作の梁貴子さんや『サイの角のようにひとりで行け』などで知られる孔枝泳さんなど。おそらくチョ・ナムジュさんもそれらの作品を多数読んでこられたはずです。
推測の域に留まりますが、多分それらの作品を夢中で読んで、「それでも社会は変わらない」という絶望のなかで書かれたのが『キム・ジヨン』だったのではないでしょうか。日本人読者のなかにはキム・ジヨンの人生を目の当たりにして、あまりの辛さに泣いてしまった方も多かったと聞きます。
そんな方は、本作で「できることは何なのか」を探ってみてほしい。これは悲惨な現実に直面して「できない」と泣くのではなく、「ではどこまでできるか?」という限界を求める極端な思考実験の物語なんです。著者の梁貴子さんは物語の最後、ミンジュの人生の語り手という存在を埋め込むことで大きな問いを読者に残します。フェミニズム文学という枠組みを発展させた、爽快感と破壊力に満ちた作品だと思います。
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願うのは私に禁じられたこと
2026年7月23日
定価 2,992円(税込)
文藝春秋
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小山内園子(おさない・そのこ)
1969年生まれ。NHK報道局ディレクターを経て、社会福祉士として活動。延世大学語学堂や翻訳学校などで韓国語を学び、以降は韓国の政府機関の招聘プログラムやライターズレジデンスなどで韓国に暮らす。ク・ビョンモ『破果』で第15回翻訳ミステリー大賞受賞。著書に『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』、『2人は翻訳している』(共著)、訳書にキム・ユダム『ケアする心』、カン・ファギル『大丈夫な人』、チョ・ナムジュ『耳をすませば』など。
