乗客の胸に刻まれる唯一無二の物語
クルーたちの想いが美食をさらに楽しませる
美食の数々もまた「ななつ星」の大きな魅力。雲仙コースの車内で供される熊本市のレストラン「MIMAKI」の“あか牛ハンバーグカレー”もその一つだ。
三牧信治シェフは、18年師事した故橋本民雄シェフから伝統の味と「ななつ星」の役目を受け継いだ。
「あるお客さまが『食の細い夫がこのカレーは最後まで一緒に食べることができました』と喜んでくださった時は本当に嬉しかったですね。熱々のカレーを素早くサーブしてくれるクルーの存在も本当にありがたいです」
そう、「ななつ星」の旅を何より支えているのは、乗客に寄り添うクルーたちの想い。クルーの塩島吉博さんは、「揺れる車内では、多少レストランマナーと違ってもお客さまの安全と快適性を意識しながらご提供しています」と語る。一方奥村美幸さんは、一杯のお茶を巡る一組の乗客夫婦との思い出が忘れられないと言う。
「私の好きな山の景色を見ていただきたいと思い、タイミングを見て客室にお茶をお持ちし、その山を背景にお二人を撮影したんです。その後奥様が出ていらして、『夫は闘病中でこれが最後の旅だと思う。写真はずっと大切にします』と。特別な瞬間をご一緒できたことに胸がいっぱいになりました」
極上の空間、自然に抱かれるエクスカーションと九州の美食、そして人と人との触れ合い。「ななつ星 in 九州」のクルーズは、唯一無二の物語を乗客一人ひとりの胸に刻んでくれる。
CREA Traveller 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
