「ななつ星」が教えてくれる 九州の心、九州の大地

九州各地を訪れて読み解く“水の物語”

 「ななつ星」の雲仙コースは“九州の水の恵みが紡ぐ物語”をコンセプトの一つとしている。

 旅の1日目、博多駅を出発して最初に向かったのは、福岡県筑後地方の山と川に囲まれた久留米絣の工房「藍生庵」。国の重要無形文化財である久留米絣の名家・松枝家を受け継ぐ松枝小夜子さんと息子の崇弘さんが、デザインから織りまで36工程にも及ぶ手仕事の技を解説してくれる。

「久留米絣の深い藍の色は、筑後川がもたらす水と化学染料に頼らない日本古来の発酵法から生まれます。この土地の水の恵みがあるからこそ久留米絣の伝統を守れるのだと感謝しています」

 穏やかにそう話す崇弘さん。「ななつ星」で巡る“水の物語”の第1章は、強く美しい天然の藍色で綴られていた。

 第2章のページを繰ると、描かれていたのは雄大な草原の光景。2日目のエクスカーションで訪れる阿蘇外輪山は阿蘇の火山活動によって形成されたカルデラの外縁にあたり、中心には日本一の面積という大草原が広がる。

「自然のものだと思われがちな光景ですが、じつは約千年にわたり人々の手によって維持されてきたもので、世界農業遺産にも認定されています」

 阿蘇カルデラツーリズムの南謙三さんの言葉に、目の前の草原がいっそう雄大さを増していく。

 360度さえぎるもののない風景の中で風の音を聞き、草原によって濾過された天然水で淹れたという野草茶を味わう時間。五感で千年の時の流れを感じ、阿蘇の湧き水に心まで洗われていくようだ。

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CREA Traveller 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。