満足できないからこそ、モチベーションにつながる
――俳優を始めて間もない頃は、悩んでいた時期もあったそうですね。
そうなんです。NHK連続テレビ小説『君の名は』でヒロインを務めさせていただいたとき、周りは素晴らしくて、経験豊かな方ばかりでした。その中で私は、「みなさんに迷惑をかけてしまっているのではないか」と、いつも不安を感じていました。「どうして先輩方のようにできないんだろう」と悩んでばかりでした。
――それでも、俳優の道を歩み続けようと思ったのですね。
連続テレビ小説の撮影は、準備期間を含めると1年以上にも及ぶので「これほど長い間、みなさんに丁寧に教えていただいたのに、ここであきらめてしまってはいけない」という気持ちだったと思います。共演者やスタッフのみなさんが本当にいい方々だったからこそ、続けられました。
先日、私が俳優を始めて15年ほどたった頃に取材してくださった方と、久しぶりに取材でお会いしたんです。その方によると、当時の私も「できない」と話していたそうです。30年以上たった今もできないことばかり。一度も満足できたことがないからこそ、「もっとやらなきゃ」、「もっと頑張らなきゃ」と思える。それが一つのモチベーションになっているのかもしれません。
楽しくて、大好きだから続けている仕事ですけど、「もう少しこうしたかった」「もっとできたんじゃないか」という思いが常にあるから今まで続けてこられたのでしょうね。
――劇中で貴理子は、生徒たちにさまざまな言葉をかけます。鈴木さんが過去の自分にエールを送るとしたら、いつの自分に届けたいですか?
やはり、連続テレビ小説の現場でもがいていた頃の自分ですね。それくらい必死でしたから。
鈴木京香(すずき・きょうか)
宮城県出身。高校時代にスカウトされてモデル活動をはじめ、1989年の森田芳光監督作『愛と平成の色男』で俳優デビュー。1991年、NHK連続テレビ小説『君の名は』でヒロイン役に抜擢されてお茶の間の注目を集める。
以降も映画やTVドラマなどで活躍を続け『119』にて日本アカデミー賞優秀助演女優賞、『血と骨』では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた。その後も『グランメゾン・パリ』、『栄光のバックホーム』など多数の注目作品に出演。
『キリコのタクト~YELL~』
出演:鈴木京香、藤原大祐、井頭愛海、田辺桃子、西垣 匠、榊原郁恵、小西博之、大島さと子、四方堂 亘、小泉今日子、宅麻 伸、名取裕子ほか
監督・脚本・原作:雑賀俊朗
10月2日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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