苦しみと向き合うだけでなく、違うことに目を向ける

――『仏教レコード』では、具体的にどう自分を救っていけばいいと書かれているのでしょうか。

 人間、苦しみとしっかり向き合うことも大切なんですが、それを解決するためには全く違うことをする、というアプローチが必要な場合もあります。哀しみや苦しみより、まず自分を光らせる、つまりワクワクさせる方向に焦点を当てるわけです。

 例えばダイエット。これは私のケースですが、深夜になるほど食欲が増して、夜中の2時にインスタントラーメンを食べてしまうようなことがありました。そこで、他に気を紛らわせる方法として、趣味で集めているピンズ(ピンバッジ)の「引っ越し」をすることにしたんです。

 うちにはピンズ専用のコレクションブックが3冊あるんですが、それを痛バッグ(大量の推しグッズで装飾した、“イタい”バッグ)に、こつこつと移していくんですよ。それで食欲をごまかす(笑)。仕事が詰まっているときも、「また仕事か、しんどいな」ではなく、「行った先にピンズ屋さんがあるかも」と思うと頑張れる。

 自分の中に多角的な「情報」を持っている人ほど、苦しいときに思考を転換しやすくなります。ちょっと嫌なことをされたとき、「向こうにも事情があるんだろう」と思えるのも、情報があってこそ。学校のクラスでいじめられていても、隣のクラスにはあなたを好きな人がいる、といった情報を知っているだけで、見える景色が変わってきますよね。

 こう言うと、ただの気晴らしの工夫に聞こえるかもしれません。でも実はこれ、『仏教レコード』の核心にある考え方と同じ構造なんです。自分の意識をどこに向けるか。そのために、どれだけの情報を持つことができるか。これを一人の人間の話ではなく、地球規模、宇宙規模まで広げて考えたものこそが、本書のテーマであるアカシックレコード、そして虚空蔵なんです。

――『仏教レコード』によると、アカシックレコードは、過去・現在・未来のすべての情報が記録されているとされる、いわば“宇宙の図書館”のような概念で、仏典にある「虚空蔵」と非常に似ていると。また、虚空蔵にアクセスできれば、無限の教え、つまり情報が手に入ると書かれています(詳しくは後篇にて)。こうした捉え方も、これまでの仏教学者の解釈とはずいぶん違いますよね。

 これまでの仏教学者は、虚空蔵というものをぼんやりとした想像上のものとして扱ってきました。ほかにも、お経に登場する科学的な証明ができない事柄については、概念として・思想として捉えるところで留めてしまいます。「あることにして」語る、というか。

 私はそうではなく、「実在する」と考えているんです。歩いて行ける距離にある、というくらいの感覚で。そこが他の宗教者と大きく違うところだと思います。でのこれは、お経の中にも書いてあることなんです。方便を捨てて、本当にここに書いてあることをそのまま真正直に信じて大丈夫です、と。

 それでも多くの学者は、私のような、いわばSF的な捉え方を理解するのが怖いんじゃないかと思います。そこまで踏み込む勇気がないというか。でも、科学がお経に追いつき始めている部分もたくさん見受けられるのです。

 例えば、法華経のなかには、「星と星の中間に、太陽と月の光でさえ照らすことのできない暗黒の世界がある」と読める箇所があります。この暗黒の世界とは、現代で言うところのブラックホールのことではないでしょうか。

 ブラックホールの中がどうなっているのか、現代の物理学でもわかっていないことが多いのですが、お経では、それについても言及されています。こんな興味深い記述がいくらでもあるのがお経の奥深いところです。

 後篇では、いよいよ本題である「虚空蔵」との繫がりと、三木さん自身が経験してきた不思議な体験について、じっくりお聞きしていきます。

» 後篇に続く

三木大雲(みき・だいうん)

光照山蓮久寺第38代住職。怪談を切り口にした「怪談説法」を確立。実際にあった相談に基づく怪奇現象、自身の体験など、現代の怪談を説法へと繋ぎ、考え方や生き方、死生観が変わる仏教の教えを説く活動をしている。テレビやラジオ出演のほか、YouTubeでの発信、イベント出演等多岐にわたり活躍中。2024年に刊行した『お経から読み解く未来予言 仏教コード』(Gakken)は10万部を突破。YouTube「三木大雲チャンネル」登録者数46万人、「三木大雲の人類大会議」登録者数16万人。2026年3月スタートの「三木大雲のポジティ部ラジオ」も好評。※2026年9月現在の情報です。

お経に記された宝のありか 仏教レコード

定価 1,650円(税込)
Gakken
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次の記事に続く お経が示す「永久に尽きることのない法の宝が詰まった蔵」...