神話と職人技が織りなす、シチリアへの深い愛

 コレクションテーマは「オリンポスの女神を信奉する者たち」。インスピレーション源は、シチリアの野に咲き誇る花々だ。花を摘み、花輪を編み、巫女のように永遠の美の儀式の中で祭壇を飾り立てるシチリアの女性が、オリンポスの女神たちと出会う特別な夜が幕を開けた。

 次々と登場する、花のドレス。ドレスを覆う花々は、単なるデコレーションではない。野趣あふれる野の花が、特別な夜の祝祭のために意思と感情を持って集まり、歓喜の舞を踊るように見える。花々は立体的で、花びらやリーフには繊細な色彩のニュアンスが幾重にも重なり、写実的で絵画のような美しさを生み出している。

 チュールをふんわりと幾重にも重ねたグラデーション豊かなドレスは、シチリアの夕暮れの空や青空に浮かぶ雲を思わせ、そのチュールの間にも手描きの花々が顔をのぞかせる。大きな一輪の花が、ボディを覆うようなトップスや、インターシャの技法で花々を配した立体感のあるエコファー、花を手に寝転ぶ天使が両肩にとまり、花が散りばめられたカポディモンティの繊細な磁器のようなトップスも。

 1900年代初頭のドレスを彷彿とさせる、長いシルクのフリンジを袖口や縁にあしらったエクレクティックなローブには、シルクビロードの鮮やかな花が浮き彫りになっている。

 シチリアのテラスに並ぶ装飾的なテラコッタの鉢からインスピレーションを得たルックもある。まるで熟練の陶芸家の手によって形づくられたかのような、繊細なレリーフのオレンジやレモンのモチーフ。果実やつるは、艶やかなデュシェス生地の彫刻的な質感で表現されクリスタルで彩られて、幾重にも重なるチュールの雲の上に軽やかにたたずむ。

 これらは全て職人による手仕事。仕立の技術はもちろんのこと、刺繍やインターシャ、染色技術の追求にも、尽きることないこだわりが見える。ドルチェ&ガッバーナならではの、細部に宿る緻密なこだわり、卓越した職人技によって生まれたマスターピースたちは、トータルで100ルック。生命力を湛えた花々が渦を成し、会場を練り歩く様は圧巻だった。

 このコレクションの核心にあるのは、「美へのディヴォーション(超越的な愛、献身)」だという。

シチリアにいにしえから息づく美。天と地を、神話と現実を、女神と崇拝者を結びつける美。そしてそのディヴォーションが『アルタ モーダ』となる。――アルタ モーダ コレクション ナレーションより

 ドルチェ&ガッバーナのシチリアへのこだわりは、ミラノで発表されるプレタポルテのコレクションにも見て取れる。今回のコレクションでは、その背景にある、デザイナーのシチリアへの想い、愛の深さを知ると同時に、シチリアの生命力あふれる美、神がかった力、献身の感情など、さらに深く重層的な魅力に触れることができた。

 永遠の美を祝い、花を飾るシチリアの女性がオリンポスの女神たちと出会う特別な夜。そんな情景を心に思い浮かべながらシチリアを旅すれば、今までとはまた違ったシチリアを感じられるかもしれない。

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