「なぜ?」を問い続ける。人の心に届く言葉のつくり方
――SNSでの発信は、本質を突く厳しい言葉もありながら、最終的に背中を押し、前向きな気持ちにさせてくれる印象があります。発信する際に大切にしていることはありますか?
そもそも、愛情が感じられない質問には、答えません。そして「この人に愛情を込めて伝えられる」と思える結論が見つかるまでは、投稿しない。たくさん寄せられる質問のなかから絞り込むのですが、これと決めてから何度も反芻します。
「この人は、本当は何に悩んでいるんだろう」「どう答えるべきなんだろう」。実は、質問そのものが本当の悩みじゃないことも多いんですよね。表面的な悩みが書かれているけれど、実際はもっと根深い。だから、そこを掘り下げて、「あなたが本当に悩んでいるのはここじゃない?」というメッセージを発信することも多いです。
――だから、あの"ズバッ"と刺さる言葉が生まれるんですね。百合子さんは言語化するのがとても上手だなという印象を受けます。
日本語はそれほど得意なわけではないのですが(笑)、一つだけ昔からやっていたことがあります。それは、何かあるたびに、「なぜ」と仮説を立てること。「5 Whys(なぜを繰り返す思考法)」を、ビジネスを学ぶずっと前から自然にやっていました。
父がとても破天荒な人で、子どもの頃は「なぜこんなことをするんだろう」「どうしてこうなるんだろう」と考えていました。姉に対しても、「怒られるとわかっているのに、どうして門限を破るんだろう」とかね(笑)。事象に対して「なぜ?」と疑問を持ち、自分なりの仮説を立てる。『センスのトリセツ』でも取り上げましたが、これはとても大切なポイントです。
最近は何かとAIに聞く人が増えていますよね。でも、クリエイションを生み出したり、新しい事業をつくったり、先駆者となる人には、自ら「なぜ?」と考える力が欠かせないと思っています。
――ご自身もコンプレックスがあったそうですが、どうやって乗り越えたんですか?
姉に「鼻がゴリラみたい」って言われて、ずっと鼻がコンプレックスでした。乗り越えられたのは、洋楽に夢中になったことがきっかけです。とくに大好きなのがローリ・ヒルとダイアナ・キング。2人とも、いわゆる“シュッとした鼻”ではないんだけど、ものすごくかっこいい。その姿を見て、「私と同じような鼻でも、こんなに素敵でいられるんだ」と衝撃を受けました。
それまで私は、自分の顔の鼻ばかり見ていたんですよね。でも、全体で見ると、その鼻もその人の魅力の一部になっている。「ああ、私の見方が狭かっただけなんだ」そう思えたことで、コンプレックスとの向き合い方が変わりました。
――お子さんとのコミュニケーションで意識していることはありますか。
まさに「なぜ?」を大切にしています。
親の言うことを聞かせるのではなく、「どうしてそう思ったの?」「なんでそうしたいの?」と問いかけて、子ども自身が自分の考えを言葉にできるようにしています。たとえわがままに聞こえることでも、理由を聞いてみると、その子なりの考えがある。その理由を一緒に考えることが、思考力や自己主張する力につながると思っています。
私は、子どもは絶対に3人ほしいと思っていました。「2人はペアだけど、3人になると“社会”になる」と母がよく言っていたからです。2人だと、自分がAと言えば相手はBという一つの関係しか経験できません。でも3人になると、Aと言ったときにBと返す子もいれば、Cと返す子もいる。「こういう考え方もあるんだ」と、自分の常識が絶対ではないことを自然と学べるんですよね。
これはアインシュタインの「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションだ」という言葉にも通じると思っています。
――お子さんが、コンプレックスを抱いたらどうしますか。
もうありますね。とくに上の子は早かったです。彼女は夫に似て目が一重なんですが、3歳のときに「ママの目の上には線があるのに、私の目には線がない」と自分から言いました。プリキュアやメルちゃんと比べたみたいで。
そのとき私は「それでいいんだよ」と伝えました。一重や奥二重で魅力的な方の写真を見せて、そもそも人間の目はみんな違って当たり前だという話をしたんです。そして、「メルちゃんはお人形だから、あんなに大きな目の人は歩いていないよ」と言ったら、それ以降は言わなくなりました。
つい最近もありました。子どもたちは3人とも私に似て色黒なんですね。小学校に入ってから、お友達に言われたことで、「肌が黒い」ということを気にしはじめて……。「ママもずっと黒いよ」とか、「ママは気に入っているよ」と言い聞かせたり、「なんで気に入っているの?」と聞かれたら、「かっこいいからだよ」と答えていました。
そうしたらちょうど昨日、お友達に「色黒だね」と言われたときに、「そうなの、かっこいいでしょって返したんだよ。合ってるよね?」と得意げに話してくれました。
