コンプレックスこそが「武器」
――読者の多くが、自分の顔や体のコンプレックスに苦しんでいます。その呪縛を解くには何が必要でしょうか。
小田切 まず知ってほしいのは、コンプレックスに目が行く時点で、自分に対して弱気になっているということ。本来は、自分のよいところを一番に見つけるべきなんです。それに、コンプレックスこそが「個性の宿る場所」だと気づいてほしい。際立っているから気になる。けれどそれは、裏を返せば唯一無二のチャームポイントになるはずなんです。多くの方はメイクをする際、まず欠点を隠そうとして厚塗りになってしまいます。でも、順番が逆。まずは自分の好きなパーツを一つ見つけ、そこを引き立たせるメイクをする。その後で、どうしても気になる場所があれば、二番手として対応すればいいんだから。
ゆりやん 実は私、昔は自分の眉毛が本当に大嫌いだったんです。中学生の時は、周りのみんなが眉毛を細く剃っているのが羨ましくて、とにかく剃りたくて仕方がなかった。でも、父親がすごく厳しくて、「眉毛を剃ったら不良になる」「浅野温子さん見てみぃ。浅野さんみたいなきれいな眉毛を持っているのに」と猛反対されたんです。当時は隠れて剃ってはバレて激怒されて、「なんで私の人生、眉毛に支配されてんねん!」って思ってましたけど(笑)、今は大事に思えるようになりましたし、父親にも感謝しています。だから今日もそこをメイクのポイントにしてもらえて嬉しかったです。
小田切 コンプレックスの呪縛を解くのは、最後は「自信」しかないと思うんです。そして自信をつけるには、小さな成功体験を積み重ねていくことが大事。メイクの成功なのか、仕事の成功なのか、それは人それぞれだけど、成功の積み重ねは必ず自信につながります。だから失敗を恐れずにトライし続けること。メイクは整形と違って、失敗しても落とせます。いろんな色を試して、「これ、意外といけるかも」と試行錯誤してみてほしい。途中で諦めないで、失敗してもまたやること。自信があるかのように自分を演出することだって重要だと思うんです。
ゆりやん 私の眉毛も、「芸人だからこれが面白い」と思っているわけではなくて、本当に心から大好きで、「これは私にしかないもの」だといつのまにか感じられるようになりました。
小田切 それは心のメイクがちゃんとできている証拠ね。私は、女性の芸人のみなさんのことが大好きなんです。なぜなら、彼女たちは自分の人生に責任を持って、覚悟を決めて生きているから。その覚悟が顔に表れていて、自信に満ち溢れている。パーツの黄金比がどうこうではなく、生き様が顔に出ている人は、それだけで圧倒的に美しいんです。
――ゆりやんさんは、芸人として「美容」に抵抗があった時期はありますか?
ゆりやん ありましたね。「芸人やのに化粧して、色気づいてると思われたらどうしよう」とか。昔の勝手なイメージで、「女芸人は見た目を捨ててナンボ」みたいな空気を感じていた時期もありましたし。マニキュアを塗るのも、どこか恥ずかしくて、「美容はきれいな人がするもの」みたいに切り離して考えていたこともありました。でも、ある時メイクさんに「こういう唇にしてみたい」「眉毛をこう生かしたい」と自分の意思を伝えてみたんです。それが形になった時、すごく「自分」を取り戻した感覚があって。流行とか誰かの基準に合わせるんじゃなくて、自分が持っているカードをどう切るか。どう健康的に生かすか。それが美容なんだって気づきました。
続きは「CREA」2026年春号でお読みいただけます。
ゆりやんレトリィバァ(ゆりやん・れとりぃばぁ)
1990年奈良県生まれ。関西大学文学部卒業。大学在学中の2012年に吉本興業NSC入学。17年、THE W優勝。21年R-1グランプリ優勝。ドラマ『極悪女王』で主演を務めるなど、活躍の場を広げている。
小田切ヒロ(おだぎり・ひろ)
1982年生まれ。ヘア&メイクアップアーティスト。唯一無二のセンスと、ユーモア溢れるトークで人気を博し、YouTube「HIRO BEAUTY CHANNEL」は登録者数160万人突破。SNS総フォロワー数360万人。
映画『禍禍女』
ゆりやんレトリィバァが映画監督に初挑戦。自身のこれまでの恋愛を投影したほぼドキュメンタリーなホラー作品で、すでに30の国際映画祭に正式出品&ノミネートを果たす。南沙良が主演を務め、アオイヤマダ、髙石あかり、斎藤工など豪華キャストが集結。
CREA 2026年春号
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