メゾン独自の視点で選び抜かれたダイヤモンド

カラー、クラリティ(透明度)、カット、カラット(重量)。それらの頭文字を取った「4C」は、世界的宝石鑑定機関であるGIAが定めたダイヤモンドの評価基準。カルティエでは、そこにメゾン独自の視点が加わる。
エキスパートがメゾンの品格やスタイルに合致するもののみを選び抜き、卓越したクラフツマンシップにより命が吹き込まれるのだ。言うなれば、5つめのC―カルティエのダイヤモンドであるというプライドが、ジュエリーとそれを身につける人をより輝かせる。
眩いオーラを放つセンターストーンが4.26カラットものソリテールリング。直線が幾重にも連なるエメラルドカットは光の回廊を内包し、じっと見つめていると危うく引き込まれそうな奥行きを感じさせる。
かの有名なグレース・ケリーもカルティエのエメラルドカットのリングに魅了された人のひとり。サイド部分のスリットから肌が見え、荘厳ながら繊細さも併せ持ったアーム、そこに用いられた40石のダイヤモンドもまた圧巻のクオリティ。
毛並みのリアルな質感も表現されたパンテール

カルティエの象徴であるパンテールが登場したのは1914年。三代目当主ルイ・カルティエがメゾン流にアレンジし、クリエイティブディレクターのジャンヌ・トゥーサンが引き継いでカルティエを象徴する存在へと確立していったという。
コレクションの変遷に合わせ、獲物を虎視眈々と狙うしなやかな肢体から茶目っ気のある愛らしい顔つきまで自在に再現。類稀なる審美眼の持ち主で、自身も最先端のファッションに身を包んでいたというジャンヌのセンスが脈々と流れたこのモチーフは、今もなお世界中のセレブリティを虜にしてやまない。
ダイヤモンドとオニキスで斑模様を、エメラルドで物憂げな瞳を描いた孤高のパンテール。毛並みのリアルな質感を表現するために、熱を加えた地金を飴細工のように引きながら宝石を囲うペラージュセッティングというメゾン独自の技法を使用。これだけの宝石を敷き詰めながら、手触りは被毛のごとく滑らか。
2025.06.06(金)
Edit&Text=Ayano Endo
Photographs=Toshimasa Ohara(aosora)
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。