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地球のお魚ぽんちゃんからの一問一答

 トークイベントの最終コーナーは、一問一答トーク。地球のお魚ぽんちゃんさんがインタビュアーとなってつづ井さんに質問スタート!

ぽんちゃん つづ井さんは好きな漫画がたくさんあると思いますが、作風の影響を受けている漫画はありますか?

つづ井 『動物のお医者さん』(佐々木倫子)。あのギャグの感じが好きです。それから、ダイレクトに影響が反映されてるわけではないですが、情操教育的に影響されたと思うのは『ギャグマンガ日和』(増田こうすけ)。

ぽんちゃん 私も! 小学生のときに出会った『ギャグマンガ日和』は衝撃でした!

 では次の質問。毎日起きる時間と寝る時間は決まってますか?

つづ井 その質問が来るということは、ぽんちゃんはバラバラなのかな?

ぽんちゃん 去年までは会社員をしながら漫画を描いていたので、起床時間は決まってたんです。今年から専業漫画家になって、起きる時間が乱れてきて。

つづ井 東京で一人暮らしを始めた最初のころは開放感からぐちゃっとしてたんですけど、今は12時半には寝てます。できれば日付が変わる前には寝ようと思うんですけどね。起きる時間は9時。いっぱい寝ちゃってすみません(笑)。

ぽんちゃん 私も今日からマネしよう!

「つづ井さん」として生きすぎない

ぽんちゃん では3つめ。私は自分の漫画を読み返すのが苦手なのですが、つづ井さんは読み返す方ですか?

つづ井 読み返しますよ。日記だから、読み返すとめちゃくちゃ楽しいです。

 私、絵日記を描くことですごい得してるんです。楽しいできごとがあって、「楽しかったな~」って思い出しながら描く。清書するときも「楽しいな」って思う。読んでくださった人の感想を聞いてまた楽しんで、自分で読み返してまた楽しい。ひとつのできごとを、めっちゃ何回も反芻して楽しめる。それが10年分、形になって残ってる。それもとびきり楽しかったことを選んで描いているわけなので。

ぽんちゃん そっかぁ。なんて素敵な!

つづ井 創作の場合、読み返すのははずかしかったりしますよね。経験あります。

ぽんちゃん 特にギャグだとドキドキしちゃう。読み返して笑えなかったらどうしようとか。

 では次。漫画家はオンオフを切り替えるのが難しいと思いますが、日常を描いているつづ井さんのオンとオフのリズムを知りたいです。

つづ井 ないかな。

ぽんちゃん それがないからこういう作品ができるんですかね。スイッチを切るとかつけるっていう考え方じゃないのかな?

つづ井 「絵日記のために楽しいことを起こす」ことはしないと決めてるんです。絵日記のネタを作るために日常をそっちに寄せちゃったら、ひずみが出てくると思う。人って簡単におかしくなってしまうと思うので。

 オンとオフを切り替えるのではなく「描くこと、描かないこと」の取捨選択はあります。たとえばまる一冊老犬介護の話を描かせていただいた『老犬とつづ井』も、事実の中で描くことと描かないことを時間をかけて整理しました。その線引きは、自分の中でちゃんとしておかないとと常々思っています。「つづ井さん」として生きすぎない。生身の私として生きた結果、「つづ井さん」のおもしろいエッセイができればいいなと。その順番を崩すことのないようにと思っています。

ぽんちゃん 納得です。「ネタ」みたいな感じではなく、自然な感じで楽しさが伝わってくるのでそのままでいてほしいです。

 『つづ井さん』という作品の魅力の核に迫るような言葉に、感嘆のため息がもれる。しかし、ここでそろそろタイムリミットに。

 地球のお魚ぽんちゃんさんからの、最後の質問――。

2025.06.07(土)
文=粟生こずえ
撮影=山元茂樹