自分が食べたいものはまず自分で作ってみる

――小学生のときから料理をしていたということですが、最初から料理が好きだったのですか?
料理は作るのも食べるのも好きでした。理科の実験のような感覚で「もっとおいしくできないかな?」と、いろいろ試すのが楽しかったし、親も自由にやらせてくれました。ピーマンをトースターで丸ごと焼いて、ヘタを取ったところから自家製のタバスコを入れて食べたり。
――自家製のタバスコ!?
市販のタバスコのラベルを見たら「酢、唐辛子、塩」と書いてあったので、それを適当に混ぜただけの液体。そういうのが楽しかったんですよ。インスタント・ラーメンでも、片栗粉でスープにとろみをつけてカサ増ししたり、溶き卵を加えてあんかけ風、酢を加えてスーラータンメン風、レモンを絞ってタイ風、みたいにアレンジして。食事に対するスタンスは、あのころから変わりません。「自分が食べたいものは自分で作る」。
――探究心がすごい。そうしたアイデアは外食から?
外食の場合もありましたが、さっきの例で言うと、ちょっと高いカップ麺の味を「サッポロ一番」などの袋麺と、台所にある材料を使って再現したものですね。子どもだったし特別グルメな家庭というわけでもなかったので、わざわざ珍しい素材を買うということはなくて。
いわゆる“おふくろの味”を自分で作るようになったのは、大人になってから。実家のぬか漬けは山椒が入っているのが特徴でとてもおいしかったんですが、母はもう作らないというので作り方を教えてもらいました。そのぬかみそで青魚を煮る郷土料理「ぬか炊き」も懐かしい味です。

――今も仕事以外で料理をする機会は多いんですか。
やってますよ。自炊がいちばんストレスがないし、満足度も高いので。僕、好きなものは大量に食べたいタイプなんですが、お店だと「コイツ、砂肝ばっか食ってるな」とか思われるじゃないですか(笑)。自宅なら気兼ねなく好きなだけ、好きな味付けで食べられて、冷めてもまた温め直せる。お酒は飲んでもいいし、飲まなくてもいい。友だちがいてもいなくてもいい。
2025.04.04(金)
文=伊藤由起
写真=佐藤 亘