また、男性同士のケアを描くのであれば、男性同士の恋愛と結びつけてもいいはずだが、本間かなみプロデューサーは本作の構想を語った際に、恋愛に発展する話ではないと先に発言している。そうなると本作は男性同士の友情がメインのドラマとなるが、BLにはしないけどライトな「ブロマンス」ファンは射程に入れているのでは、と邪推を入れてしまいたくなる。

 というのも、井之脇海は「ギヴン」、草川拓弥は「みなと商事コインランドリー」、金子大地は「腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。」で、性的マイノリティ役を演じている。その配役で固めていることもうますぎて、それ故に余計な勘ぐりをしてしまう(もちろん、演技が素晴らしいので邪推なしに適役なのだけど)。

私たちが頑張るべき活動は「晩活」ではない?

 これまでのごはんを軸にしたドラマにおいて、すでに名作はたくさんある。男性同士のカップルの食卓を描く「きのう何食べた?」。料理を通じて惹かれ合っていく2人の女性を描く「作りたい女と食べたい女」。恋愛体質な女性とアロマンティック女性の共同生活を描く「今夜すき焼きだよ」。そしてもう一つ、本作が好きな方におすすめしたい作品がある。それが「かしましめし」だ。

 「かしましめし」は同級生の自死をきっかけにアラサーの男女3人が再会し、それぞれの人生に悩みながらも、「おうちごはん」を囲み、やがて一緒に暮らし始める物語。

 主人公の千春(前田敦子)は憧れのデザイン事務所に入社したものの、上司からパワハラを受け、心を病み退職。その後、婚約破棄され、新設部署(閑職)への移動を命じられるナカムラ(成海璃子)、彼氏との関係がうまくいかない英治(塩野瑛久)という、同じ美大卒の二人の友人とともに暮らしだす。

 仕事に、恋に、人間関係に……うまくいかないことだらけだけど、一緒に美味しいごはんを食べればお互いに救われる。そして優しい人たちとただ寄り添って生きていることを描いた、三人の“かしましい”日常は観ていて心地いいものだった。

 男女の二元論の枠組みを超えて、もっと自由に交流しながらお互いのケアをする。これが一つの理想な気がする。本作は現状、男3人がケアし合う「晩活」であるが、そこにたとえばゆいが加わってもいいと思う。共闘できる者同士が、羽を休め、現実に立ち向かうための「晩活」。そういうものが、流行ってほしい。

 そうなったら、もう晩活なんて言い方をわざわざしなくてもいいのかもしれない。私たちがすべきは、ちゃんと自分自身を「生」きるための活動。すなわち、「生活」だ。

2025.02.19(水)
文=綿貫大介