エミューは「自治体への届け出なし」でOK
最初はヤギを飼うことを考えたというが、「ヤギは寂しがり屋で1頭だと鳴きまくるので、飼うなら最低でも2頭いないといけないそうです。あとは高い場所に登る習性があるので、そういう場所を作らないといけないし、鳴き声も近所迷惑かな、と断念しました」
それから羊やポニー、ニワトリなど“雑草を食べてくれるヘルパー”となる動物をいろいろと検討した末、最終的に行き着いたのがエミューだった。
「もともと生き物系YouTuberの『ちゃんねる鰐』さんの動画を見るのが好きだったんです。その鰐さんの動画でエミューを孵化させて育てているのを見て、『エミュー、ありかも』と」
調べてみるとエミューは特定動物には該当しないので自治体などへの届け出も特に必要なく、雨風がしのげる場所があれば、現在の敷地面積で十分育てられることもわかった。
戸惑う夫の反応は…
こうなるとサホさんの行動は早い。早速、夫のデービッドさんに「エミューを飼いたい」と伝えたところ――。
「いつものことなんですが、だいたい私がシェパードを飼おうとか、ログハウスを建てようとか、エイッと決めちゃうので、夫は『またか』という反応でしたね(笑)。最初のうちは『えぇ、でもエミューでしょ!? うーん、どうだろう』とかちょっと戸惑ってましたが、私の決心が変わらないのを見て、『エミューがいる人生もありか……』という感じで、最終的には人生の面白いことのひとつとして受け入れた感じでした」
エミューの寿命は20~30年
ところで、そもそもエミューはどこで手に入るのだろうか。
「国内にいくつかエミューを扱っている会社があるんですが、私は福岡でエミュー事業を行っている会社に問い合わせました。そこはエミューを活用するためのコンサルティングや素材を生かした商品の開発などを手掛けている会社で、ここなら信頼できるな、と思ったんです」
エミューの飼育に関するハードルが思いの他、低かったことに加えて、サホさんの背中を押したことがある。それは「エミューは20年から30年生きる」という事実だった。
「もうこうしちゃいられない、と(笑)。私たちだっていつまで生きられるかわからないので、一刻もはやく迎え入れて、1日でも長く一緒に暮らそうと思いました」
そして2023年のゴールデンウィーク、サホさん一家のもとに3月3日に生まれたばかりのエミューの雛がやってきたのである。
写真=松本輝一/文藝春秋
〈自宅からエミューが脱走…「とても焦りました」東京に出勤しながらエミューと暮らす会社員女性が語る“理想と現実”〉へ続く
2025.02.07(金)
文=伊藤秀倫