奔放な女性を描いた『あそびあい』、同棲中の恋人と年下の異性との間で揺れるアラサー女性を描いた『恋のツキ』、そして東京で暮らす30代カップルの同棲生活を描いた『若草同盟』……インタビュー後篇では、一貫して、いわゆる「ふつう」からはみ出した人を魅力的に描いてきた新田 章さんに、恋愛観や結婚観、さらに創作の原点について伺いました。
『若草同盟』あらすじ
スーパーの店員・冴木カイロと、会社員・羊野アユム。それぞれやるせない気持ちを抱えて生きる2人が東京で出会い、同棲生活をスタート。最強の幸せを手に入れて、愛する人とこのまま平穏な暮らしが続くと思っていたが……。生きづらさを抱えるすべての人へ贈りたい、未熟な2人の“愛”の物語。
》新田 章インタビュー【前篇】を読む
》マンガ『若草同盟』第1話を読む
“社会派”的な作品を描きたかったわけでは…
――『若草同盟』は、これまでの作品とはちょっと違った角度から世の中を見ているような印象を受けますが、新田さん自身が今までの作品とは違うと感じていることはありますか?
特別、“社会派”的な作品を描きたかったわけではないのですが、予想していた以上に「ヘビーだ」いわれることが多く、驚いています。私としては、カイロがすごく明るい分、ポップにとらえてもらえるかなと思っていたのですが……。
でも、人間の本質のようなところを描こうと思うと、どうしても深刻な部分も出てきてしまいます。ちょっと欲張りかもしれませんが、その深刻さと、漫画としてのエンタメ性、両方受け取ってもらえたら嬉しいですね。
――ドラマ化された『恋のツキ』では、同棲中の恋人と高校生との間で揺れる主人公が描かれ人気を集めました。『若草同盟』の第1巻ではカイロとムーさんが結婚するかも、しないかも……と揺れ動いていますが、改めて新田さんにとって恋愛や結婚は、どんなものでしょう?
子どもがいるかいないかで大きく変わります。子どもがいなければ、恋愛も結婚も、したい人といくらでもすればいいし、終わらせたいときはやめればいい。したい人がいなければしなくてもいい。今のところ、自分は異性が恋愛対象ですが、同性の方に恋することもあるかもしれません。
個人的には、お金や肩書よりも、その人と「一緒にいたいか」のみで考えていますが、それより優先したい生活――お金とか――があるならば、それはそれでいいんじゃないかな、と。いつか報われるのか、後悔するのか、それはいつかの自分にしかわかりませんから。
子どもがいる場合は、「子どもの安全」を第一に考えるべきです。子どもは大人と違って、一人では生きていけないから。場合によっては子どもを手放すことになったとしても、「子どもの安全」を最優先にするべきでしょう。その上で「自分がどうしたいか」をとことん考えて、誰かに相談したりもして、恋愛なり、結婚なり選べばいいのでは、と思います。
――明確ですし、すごくよくわかります。新田さん自身がパートナーとの関係を円滑にするために、心がけてきたことはありますか?
「感謝」と「謝罪」ですね。お皿を洗ってくれたり、洗濯してくれたりしたときなど、なんでもいいから「ありがとう」「ごめんね」と伝え合うこと。
例えば、私は女なのでなんとなく自分が家事をやるのは当たり前だと思っていたのですが、パートナーから「ありがとう」と言われるとやっぱりすごく嬉しくて。とても些細なことですが、日常の心の健康のためにも大切だなと思いますね。
2025.02.05(水)
文=河西みのり