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「誰が面白がるんだ」と思ったものも、案外うまくいく

──1本の動画から始まった「説明」が、書籍化をはじめさまざまな広がりを見せたと思いますが、昨年NHKで番組化(「ドキュメント20min.『ニッポンを説明する』」)されたのも面白かったですね。さくらんぼやそばなど、山形県の名物の「説明」を、作り手の方と対面して行うもので。
ジェロニモ YouTubeでは完全に自分だけが映っているので、全員が視聴者になります。でも番組だと説明をしている自分に対して、さくらんぼ農家の方なりお蕎麦屋さんの方なりが「なんかわかりません」というリアクションをとってくださる。それがよかったですね。あらかじめ僕を知っていて面白がってくれている人は説明を楽しんでくださるし、「意味わかんないよ」と思う人は農家の方を観て「そう思っていいんだな」という、リアクションのお手本が番組内にすでに含まれていた。
──たしかに。最初は「わかりません」という感じだった受け手の方がだんだん「もしかしたらそうかも」という感想になっていくのも面白かったです。
ジェロニモ いちばん最初の「水道水の味を説明する」の動画を撮ったとき、自分ひとりで、スマホに向かいながら「これ、何してるのかな」「誰が面白がるんだ」と思っていたんです。でも、自分で編集しているうちに「これはけっこう面白いかも」と思えた。番組も、ロケ中は不安でした。スタッフの方も笑わないし(笑)。でも放送を観たら面白くなっていた。そういう体験って、実はいい方向に行くものなんだな、と改めて思いました。見えている人がいれば、面白い方向に行くんだなと。(後篇につづく:鈴木ジェロニモがこたけ正義感と交わした「ピン芸人の笑いとは何か?」論)
鈴木ジェロニモ(すずき・じぇろにも)
1994年、栃木県出身。R-1グランプリ2023の準決勝に進出するなど、人力舎所属のピン芸人として活動する一方、歌人として数多くの文芸誌に作品を発表している。第4回・第5回笹井宏之賞最終選考。
X:@suzukigeno
YouTube:https://www.youtube.com/@suzukigeno
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水道水の味を説明する
定価 1650円(税込)
ナナロク社
著・鈴木ジェロニモ
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2025.02.08(土)
文=釣木文恵
撮影=今井知佑