「真実」への欲求が強すぎる“変態”
――短歌とかエッセイ以前に、上坂さんは「真実」を希求する気持ちが、尋常でなく強いですよね。
でもどうしても止められない欲求って、人それぞれありますよね。常に恋愛していたい人もいるし、仕事で成功するのが生き甲斐って人もいる。作家の方で、とにかく書いているときが幸せという人もいるけど、私の場合は書きたいというよりは、自分にとっての「真実」をひとつでも多く見つけて、ひとりでも多くの人に言いたいって欲求が止められない。自分の中の真実も好きだし、他の人の真実も好きなんですよ。あなたの中の「ほんとう」って、そういうことなんだーーって知りたい。そういうタイプの変態なんでしょうね。
私は事象に対する自分の中の真実も好きだし、他の人の真実も好きなんですよ。あなたの中の「ほんとう」って、そういうことなんだ――って知りたい。その欲求が強すぎて、やめられない。真実の変態って感じです。
――じゃあ、上坂さんにとって「書くこと」は「真実」に近づくための手段のような?
だと思います。
彫刻って、木の丸太から元々そういう形があったように彫り出していくじゃないですか? 私にとって短歌やエッセイを書くことは、あれと同じで、自分の中にある「真実」を彫り出してる感覚がある。このシャープな輪郭を出すには、どの言葉がいいかな? 単に「やさしい」とか「さびしい」とかだと、全然彫り出せてない。それじゃあ丸太のままじゃん!って思って、言葉を推敲する。「さびしい」なら、どういうさびしさがなぜ起きたのか、それを過不足ない状態になるまで純度を高めて彫刻していく感じです。
――上坂さんは「短歌の人」として世に出たわけですが、まだまだアッと驚く世界を見せてくれそうでワクワクします。
もともと短歌一本でやっていくぞ、みたいなこだわりは全然なくて、私の場合、言葉であれば、短歌でもエッセイでもXの呟きでもラジオの喋りでも、フォーマットは本当になんでもいい。どうせやるなら、できるだけ多くの人に言いたいなって思って、今は自分でPodcast番組をやってるし、作詞やラップもしてみたいです。やったことがないことは全部やってみたい。不必要に他者に害を与えない範囲ならば、手段問わず自分の欲求を満たし続けるのが「幸福の最大化」だと思っています。
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上坂あゆ美(うえさか・あゆみ)
1991年、静岡県生まれ。2022年に第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』(書肆侃侃房)でデビュー。Podcast番組「私より先に丁寧に暮らすな」パーソナリティ。短歌のみならずエッセイ、ラジオ、演劇など幅広く活動。
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2024.11.28(木)
文=井口啓子
撮影=佐藤 亘