11月15日から映画館上映も決定
テレビ東京系で10月1日の深夜25時30分に放送された話題のドラマ番組『フィクショナル』。元々、1話数分という見やすさが人気のショートドラマアプリ「BUMP」で配信していたこのドラマ。作り上げたのは、テレビ東京の鬼才・大森時生プロデューサーと、黒沢清監督も「今一番注目し、影響も受けた」と名前を挙げる映画監督・酒井善三さんのコンビだ。
インタビューの後編では、ドラマのもうひとつの核である「フェイクニュース」という題材に込めた想いや、映画『若武者』で主演の一人を演じて注目を集めている俳優・清水尚弥さん、そしてハリウッドとWOWOWの共同制作ドラマ『TOKYO VICE』への出演でも話題の木村文さんら、本作で主演を務めた俳優たちとのエピソードなどを深掘りした。
荒唐無稽から社会のリアルを見出す“現代のおとぎ話”
――本作は宣伝で「現代のおとぎ話」と表現されていたのが印象的でした。
酒井 物語の後半は一見すると荒唐無稽にも見える方向に進んでいくのですが、その中にも現代社会の問題に実際に繋げられる要素が確かにあると思っています。そういう意味でおとぎ話足り得るのではないかな、と。
大森 アメリカの連邦議会の議事堂をQアノン信者が占拠した事件を改めて映像で見ても、『フィクショナル』とオーバーラップします。現実の出来事には到底見えないですし、現実の出来事こそがフィクショナルに感じます。
酒井 ネットを介してほぼ無限の情報にアクセスできることで、自己をこれまで以上に相対化できるようになったにも関わらず、荒唐無稽な事件が頻発するというのは不思議です。もしかすると、情報が溢れすぎたからこそ自分に都合の良いものだけを選ぶようになり、フェイクニュースという存在も生まれたのかもしれません。
2024.10.31(木)
文=むくろ幽介
写真=鈴木七絵