野宮 うちの夫も始めてる。「このままなんとか逃げ切りたいから」って(笑)。

渡辺 すごいですよね、日本挙げてのNISA推し。

田内 日本人って、同調圧力に弱いし、周りが何をやってるかをすごく気にするんです。ただ、気をつけてほしいのは、基本、「儲かっている人の声がでかい」ということ。SNSで「NISAありがとう」とか「俺は何%増えた」とか、みんな儲かっているタイミングで声が大きくなるんです(注:対談後の8月5日、日経平均株価は暴落)。ビットコインのときもそう。でも暴落するとみんな黙っちゃって、いちばん最後に高く買わされた人たちがババを引く。

 もちろん、投資はギャンブルとは違います。ただ、本質的な部分で、そのお金が日本の成長に回っているのかというと、残念ながらそれは少ない。……話が逸れましたね。何の話でしたっけ(笑)。

松本 いま私たちは投資ブームに乗るべきか否か。

 

本来の目的を見失わないように

田内 でも、30~40年前を振り返れば、個人が投資なんてしなくても日本は成長していたんです。預金をするだけで8~9%の利息がついた時期もありましたから。

野宮 バブルの頃?

田内 ですね。60年代の高度成長期もそうでした。そもそも「金融」って、「お金を融通する」ことなんです。個人から預かったお金を銀行が融通してあげることで企業が新しく工場を作る、新しい研究開発をする、それで儲かったお金が融資の利息や配当などに回っていく。昔はそれでうまくいってたんです。

 でも、1999年以降、金利が低い状況が続いているのにお金を借りて新しく何かを作る人が出てこなくなった。すると銀行は儲からない。預金してもらっていても、貸す相手がいなければどうしようもない。じゃあ、預金者に投資商品を買わせようと。で、みんながわーっと株を買って、どんどんマネーゲームになっていった。

 でも考えてみてください。みなさんのゲームの目的は?

渡辺 老後の資金です。

2024.10.06(日)
文=辛島いづみ