田内 お金が回らない理由はいろいろとあって。物価は上昇しているのに賃金が上がらないから、というのはよく言われていることですが、いまの日本は海外からの輸入に頼っている、というのが実は結構大きいんです。6月、7月には1ドル160円台まで円安が進みましたが、そうなると、日本製品が売りやすくなり、輸出でたくさん外貨を稼ぐことができる。
結果、輸出で手に入れたドルで円を買うことになり、円を買う方向に為替市場が動き円高になっていく。でも、海外の人に買ってもらう肝心の「モノ」が日本にはない。だから、なかなか円高に進まない。
何がいま日本で売れているかというと、インバウンドと不動産。しかも不動産は都内の中心部限定。僕の友人も3年前に買ったマンションを売りに出したら購入価格の1.8倍で売れたらしいんです。70平米で2億円弱。しかも10組内見に来て全員中国と台湾の人たちだったという。
女史会 ああ……。
田内 昔は、不動産価格が上がれば景気がいい証拠と言われてました。だけど、いまの時代は賃金が上がらずに、海外の人が買っているから値上がりしているだけ。儲けているのはマンションを持っている人だけなんです。
松本 国内でお金が回っているから、値上がりしているわけじゃないんですね。
田内 そうですね。
日本挙げてのNISA推しだけど、私たちもやるべき?
渡辺 だから漠然とした不安が大きくなるのかな。老後のためにはどれくらいお金が必要なのか、お金を効率よく増やすにはどうすればいいのか、そういうことばっかり考えちゃう。
田内 しょうがないんです。そういうゲームに僕らは乗せられちゃってるから。
女史会 ゲーム!
田内 なので、いまどういうゲームを自分たちがプレーしなきゃいけないか、ということを考える必要があるんです。例えば、老後の資金を貯めるゲームをするとします。最近は投資ブームだから、NISAでオルカン(注:オール・カントリー。日本を含む先進国・新興国の株式を主要投資対象とする取引)で外貨を買えばいいとか、いろいろみんな言いますよね。
2024.10.06(日)
文=辛島いづみ