バロン・ケッは獅子の聖獣です。このバロンは右の呪術を使う雄の聖獣で、ランダと呼ばれる左の呪術を使う魔女との戦いを深夜まで演じ続けます。これはどちらにも勝敗がつかない終わりなき戦いと言われています。ときには踊り手が突然にトランスし、村人に助けられることもあります。

 バリ島は四国の3分の1ほどの面積に2万以上の寺院があると言われており、さらにそれぞれの家には家寺も存在します。バリ島に住む友人が計算をしたところ、なんとバリ人は3日に1日は何らかの祭りに関わっているそうです。

 この写真は、ウブドゥ近郊の村の祭りで撮影したものです。ウブドゥで100年に1度と言われる大きな祭りに遭遇した時は、私が滞在していた3週間のあいだ、毎晩のように芸能が奉納され、隣村の寺院へお祈りに行く行列には、華やかなガムラン隊が賑やかな演奏をしながら数百人もの村人達が煌びやかな衣装をまとい行進していました。

 BALIはWALI(捧げる)という言葉から名付けられたとも言われています。舞踊も民俗音楽のガムランも、この島ではすべてが捧げものです。

小原孝博
1962年静岡県生まれ。日本大学芸術学部写真科卒業。出版社勤務を経て独立。バリ島では40回を超える撮影を行い、写真集『オラン・バリ』をダイヤモンド社より出版。バリ島や江の島などにて写真展も開催。6月10日より日本橋小伝馬町のiiaギャラリーにて写真展「光の音色」を開催予定。フォトワークショップは常時開催中。
Twitter @tak_KOHARA

2014.04.14(月)