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低めのトーンで朗読した理由

――全体に声のトーンが低めだったのはどのような理由からですか?

 基本的に「ぼく」の目線で物語が進んでいくからです。ちょっと低めで、かつ、自分が一番話しやすいトーンで「ぼく」の声を作りました。おかげで、苦労することなく最後まで楽しく読めたと思います。

 ただ、どちらも女性である「すみれ」と「ミュウ」は、区別しているつもりでも、時々似通ってしまい、混乱しました。監督から「すみれさんはもうちょっと若くて元気な感じで」「いまのミュウさんのセリフは、ちょっとすみれさんに近くなってしまっているから、もう少し落ち着いた大人の感じで」など、都度指示を出していただき、軌道修正しながら進めていきました。

――演じやすいキャラクターなどはいましたか?

 「すみれ」がメインで登場する章は、言葉が頭にすっと入り、流れるように出ていったので、気持ちよく朗読できました。ただ、自分の気持ちよさが聴いてくださる方にとっての心地よさになるかどうかは、また別なので、そこは悩ましいところだと思います。

 今回は小説だったので、キャラクターの差別化もやや変化をつける程度でしたが、これが例えば子ども向けの本だったりすると、さらに遊び心を加えた方が楽しんでもらえるのかもと思いました。

――どんな方に聴いてほしいですか?

 私自身がそうだったように、まだ村上春樹さんの作品に出会ったことがない方にぜひ聴いていただきたいです。これが村上春樹さんの作品1作目となって、世界が広がるきっかけになったら、とても嬉しいです。

 もちろん、村上春樹さんの小説をたくさん読まれている方にも聴いていただきたいです。「村上さんの世界観をちゃんと声で出せているな」と思っていただけたらありがたいですが、誰がどんなふうに聴いてもいいのがAudibleの魅力のひとつでもあるので、自由に楽しんで聴いていただけたらと思います。

『スプートニクの恋人』


配信日:9月6日
著者:村上春樹
ナレーター:宮﨑あおい
作品ページURL : 
https://www.audible.co.jp/pd/B0D7VMQY2N
収録映像・インタビュー:
​https://www.audible.co.jp/pd/B0D7VMQY2N

「すみれがぼくにとってどれほど大事な、かけがえのない存在であったかということが、あらためて理解できた。すみれは彼女にしかできないやりかたで、ぼくをこの世につなぎ止めていたのだ」 「旅の連れ」という皮肉な名を持つ孤独な人工衛星のように、誰もが皆それぞれの軌道を描き続ける。 この広大な世界で、かわす言葉も結ぶ約束もなくすれ違い、別れ、そしてまたふとめぐりあうスプートニクの末裔たちの物語。

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衣装クレジット アクセサリー:@mamelon

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2024.09.06(金)
文=相澤洋美
写真=三宅史郎
スタイリスト=藤井牧子
ヘアメイク=中野明海(nakano akemi)