プロフェッショナルなスタッフに支えられて

 時蔵さんの着付けが終わると梅枝さんが鏡台に向かい仕上げにとりかかりました。お弟子さんに頼らず自分でお白粉を手に塗り始めたのです。自立心旺盛なタイプ、なのでしょうか?

 鬘を手に床山さんが姿を現しました。丁寧に様子を見ながら微調整していきます。

 1時間にも満たないわずかな時間の中でとにかく印象的だったのは、すべてのものごとが穏やかに手際よく進んでいったことです。お弟子さん、スタッフ含めて関わる人すべてがプロ意識を持ってそれぞれの仕事と真摯に向き合い取り組んでいる証ではないでしょうか。

 すべてが整い、静かに出番を待つ時蔵さんの向こうにはまるで同じ姿のお祖父さまの絵が。萬壽さんが幼少の頃にご逝去され写真や絵でしか知らない四代目に思いを馳せ、五代目である萬壽さんから受け継いで演じる時蔵さんのお三輪、歌舞伎座で上演中の『妹背山婦女庭訓』は六代目としてのスタート、二度とない記念すべき舞台です。

六月大歌舞伎

期間 2024年6月1日(土)~24日(月)【休演日】11日(火)、17日(月)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/873