この記事の連載

大作の主役を次々任されても、自然体で臨める理由

――主役をする上で、ムード作りはされますか?

 自分の場合は、器用なほうではないので、自分を作ったりして、ムード作りをやろうとしても、うまくできないほうだし、やってると疲れちゃう人だと思うんですよ。だから、ありのままでいるようにしています。話しかけるタイミングがあったら話しかけるし……。でも、挨拶は大事なのでちゃんとしますけど、話題も思い浮かんでないのに無理して話かけたりすることは、やめるようにしています。

――そういう山﨑さんの正直な部分は、安倍晴明の「事実だけを見ようとしている」というところに繋がっているような気もしますね。

 そうですね。関係あると思います。僕も、毎日いろんな人に会いますし、いろんな考え方を持ってる人がいっぱいいる中で、自分が信じるものは、「今」しかないと思っています。「今」このチームで、この場所で撮影をしていてっていう事実しかなくて、そこでやるしかないなっていう考え方を普段から大切にしているので。だから、『陰陽師0』には共感する部分がたくさんあります。

 例えば、主観と客観のそのどちらも現実という博雅の言うセリフなんかも、考えると、結局は「今」という事実のことを言っていると思うんです。だから、「今」というものだけを感じて、「今」を頑張れば、いい方向に行くんじゃないかっていうメッセージを映画からも感じ取ってもらえたら嬉しいなと思います。

染谷将太と作り上げる「バディ感」

――この映画は、博雅と晴明とのバディもひとつの見どころになっていると思います。演じるにあたって、染谷さんと、どのような話をしましたか?

 染谷くんも、取り繕ったりとか、嘘の感情でコミュニケーションをとったりする人じゃないので、自然体な形でふたりでいられたことが、映画の中の関係性にも自然ににじみ出てたんじゃないかなと思います。やっぱり、ひとりだけ頑張っても、から回っちゃうと思うし、バディ感ってふたりで生み出すものだと思うので。

 実際には、映画の撮影に入るまでにも、乗馬の練習とかで、染谷くんとは一緒にいる時間がたくさんあって、その時間を経て現場に入りました。だから、その空気感は映画に出ていると思いますね。

 ほかにも嗣麻子さんが事前にワークショップみたいな感じで、晴明と博雅の役を入れ替えて演じてみようということも提案してくれたり、そういう準備期間がたくさんあったし、自然になんてことない話をいっぱいして過ごしたことも、よかったと思います。

――晴明と博雅の良い空気感が、色濃くにじみ出ていたと思える場面というのはありましたか?

 晴明と博雅のふたりでお酒を飲んでいる場面なんかは、染谷くんと過ごした時間とか空気感がすごく自然に出ているんじゃないかと思いました。普段は、染谷くんのほうが割と落ち着いていて、僕はまあいつもこんな感じなんですけど(笑)、でも対照的というのでもなくて、違うところは違うけれど、向いている方向とか、やっぱり一番には「空気感」っていうのは、似た感じなのかなって思います。

2024.04.20(土)
文=西森路代
写真=平松市聖
ヘアメイク=髙橋幸一(Nestation)
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)