当時は八咫烏の若い長である奈月彦とその近習雪哉を中心に、奈月彦の后選びも描けるのではないか、と構想していました。
后選びを中心とする女性パートを「たおやめの章」、権力争いを描く男性パートを「ますらおの章」と分けるつもりでいたのですが、実際に書こうとしてみると、一作にまとめるには明らかに分量オーバーであることに気付いたのです。
そこで私は、「たおやめの章」と「ますらおの章」を、章ではなくそれぞれを別の長編とする方向に舵を切り、「たおやめの章」は『烏に単は似合わない』に、「ますらおの章」は『烏は主を選ばない』として書くことに決めました。
当然、ひとつの物語をふたつに分けるからには、それぞれが単体で違うテーマを持ち、別の作品として成立する形になっていなければなりません。
同じような時間軸の出来事でも全く違う物語になるよう、あれこれ苦心して2作を書いたわけです。
この苦心が、アニメ化に際しては、逆に足を引っ張ることになりました……。
今明かされる『単』『主』の合体秘話!
企画の段階で、『烏に単は似合わない』と『烏は主を選ばない』を合体させることは決まっていました。
しかし、2つの作品の中で起こる事件は、それぞれの物語を物語として成立させるために計算されています。原作に忠実にしようと思って時間軸の通りに事件を並べると、この計算が破綻して、むしろ物語全体の構成は歪になってしまうのです。
コミカライズの連載の時にも感じたこと(コラム「第5回:『烏に単は似合わない』コミカライズ完結しました!」)ですが、媒体が違えば、その媒体に最適な物語の構造もまた変わります。
小説は読み始めから読み終わりまでを一冊で完結出来ますが、漫画の連載では1話1話で読者さんを惹きつける努力をしなければ、どんでん返しやクライマックスに到達する前に見切りを付けられてしまいます。
この課題は、アニメも同様であったようです。
2024.04.08(月)