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伝統建築の茶室「思惟庵」で茶の湯体験

 チェックアウトの前に、ぜひ体験したいのが「茶の湯」。魯山人ゆかりの茶室「思惟庵」で抹茶とお菓子をいただきながら、茶室の室礼や茶器、お菓子、茶庭など、茶にまつわるさまざまな会話を楽しむことができます。

 「思惟庵」は、もともと離れの客室として使われていた建物で、赤瓦の屋根が特徴的。茶庭は、京都・南禅寺などの作庭を担った植彌加藤造園の職人がご当地の要素を採り入れて作ったもので、小さいながらも庭園内に高低差を設け、山中の庵(茶室)へ向かう散策路をイメージしています。

 茶室内部は、漆塗り仕上げの木部、贅沢な折り上げ天井で構成された書院風の造り。床の間には、三井物産の初代社長であり茶人としても高名な益田鈍翁による「海」の掛け軸、花は敷地内に咲く椿「西王母」。上菓子は、ごちそう続きのゲストを気遣いあえて小ぶりのものをセレクト。さり気ないもてなしの心に触れ、静謐な雰囲気のなかでいただくお茶や和菓子は、一層味わい深く感じられます。

2023.12.29(金)
文=伊藤由起
撮影=志水 隆