ジブリパーク自体が宮崎吾朗作品とも言えるだろうが、ジブリでこれまで自身が手がけてきたものとの違いはあるだろうか。計画段階から造営責任者建築プロジェクトの総合デザインを務め、完成後は館長も務めた三鷹のジブリ美術館と比較するとどうか。

ジブリ美術館は内向き、ジブリパークは外向きの構造

「ジブリ美術館とジブリパークは結果的に、ずいぶん違うものとなった印象です。ジブリパークは公園なので、施設のあり方としてオープンなつくり。いっぽうでジブリ美術館は、宮﨑駿作品の世界に引き込まれどんどん内側へ入っていくようで、クローズなつくりになっています。

 訪れたことのある方は体感しているはずですが、ジブリ美術館ではすべてが内向きにできています。エントランスを通るとまず地下へずっと潜っていき、底までたどり着くと真ん中にホールのある空間に出る。ホールに面し展示室が連なっており、滞在しているあいだ視線が常に内側を向くことになります。螺旋状の動線に沿ってぐるぐる回りながら上昇していき、出口へ至るまでちょっと暗い空間に閉じ込められたまま。

 思えば宮﨑駿のアニメ作品はどれも、ジブリ美術館と同じく内側を向いた構造となっています。最新作『君たちはどう生きるか』も例に漏れず、ストーリーが進むにつれて主人公はどんどん世界の内側へと吸い込まれていく。宮﨑駿の思考の根っこに、内奥深く潜り込んでいく傾向があるのでしょう」

 

ジブリ作品にみられる、日本的な創作手法で設計

 内向きと外向きという違いは、たしかに納得のいくところ。ただ同時に、ジブリパークとジブリ美術館には、共通する特長と楽しさがあるとも感じられる。歩を進めるたび、めくるめく作品世界が続々と立ち現れて、押し寄せてくるような感覚だ。

「それはジブリ作品にみられる、きわめて日本的な創作手法が関係しているのでしょう。

 たとえば、欧米の建築や庭園が左右対称で整然としているのに対して、日本の場合は非対称で無軌道になりがちとはよく言われるところです。京都の桂離宮みたいなところだと、極端にいえば一番奥の室の床の間を起点とし、そこから必要な要素を継ぎ足していくことで、広大な建築と庭園がかたちづくられています。

2023.11.16(木)
文=山内宏泰