この記事の連載

その後の人生を変えた、堤監督との2時間

「6歳のとき、近所に住んでいるシュウちゃんっていう年上の友達と、レゴを使って宇宙基地を作ったことがあるんです。そのとき、レゴの宇宙基地を舞台に即興で作った物語をテープレコーダーに吹き込もうっていう話になって。カセットテープに吹き込まれた自分の声を再生したときに、雷に打たれたみたいな衝撃が走りました。『シュウちゃんこれ誰?』って聞いたら、『ヨウくんだよ』って言われたので、ショックで、『僕、こんな変な声じゃない!』と叫んだことを、今も鮮明に覚えています。『俺は6年間もこんな声で喋ってたのか』って思うと、すごく恥ずかしくて……。なんかちょっとその日のことを思い出しました」

 6歳のときのことを振り返っても、20代の頃を振り返っても、生き生きと、その瞬間を精一杯生きている窪塚さんがいる。

 Netflixなどで昔のドラマが観られるようになって、「池袋ウエストゲートパーク」(※以下「I.W.G.P.」)で窪塚さんが演じた「キング」こと安藤タカシにハマる10〜20代も続出している。そこで最後に「I.W.G.P.」の思い出について聞いてみた。

「原作では、安藤タカシの役は、いかにもな不良で、裸に毛皮のコートを着ているような、寡黙でクールな男だったんですよ。でも、俺の10代は、別に不良でやってきたわけじゃないから、『そんな雰囲気出せねーし』と思って(笑)。

 たしか新宿の喫茶店とかだったと思うんですけど、堤さんと打ち合わせして、そのときに、『絶対、火傷することになりますよ』って言って、『自分としては、この方向性でいきたいです』って、2時間ぐらいかな? 説得したんです。粘ったんです。『こっちの路線でやった方が絶対いいんで。俺のこと信じてください』って粘ったら、最後は、『もう好きにしな』って感じでした。堤さんにそれを言うと『俺そんなこと言ってないよ』って否定するんだけど(笑)。

 でも『キング』の役は、いまだに僕の人生に影響を与えているので、あの2時間は、今からするとめちゃめちゃ大事な時間でした」

» 【前篇】「ヒーローの登場を願った20代を経て40代、窪塚洋介流『漫画の神様に学んだ世界をよくする戦い方』」を読む

窪塚洋介(くぼづか・ようすけ)

1979年生まれ。神奈川県出身。1995年「金田一少年の事件簿」で俳優デビュー。2000年の「池袋ウエストゲートパーク」のキング役で注目される。01年、映画「GO」で、第25回日本アカデミー賞新人賞と、史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞。17年「沈黙 サイレンス」でハリウッドデビューを果たす。他に、BBC×Netflix London制作連続ドラマ「Giri /Haji」でもメインキャストを務めた。今年公開された「Sin Clock」で18年ぶりに主演を務めた。

映画『火の鳥 エデンの花』11月3日(金)全国ロードショー

地球から遠く離れた辺境の惑星・エデン17に降り立ったロミと恋人のジョージ。2人はこの星を新天地にしようと誓うが、ジョージは事故で命を落としてしまう。ロミは、息子のカインとAIロボットと共にサバイバル生活を送るが、カインの未来のため、彼が大人になるまでコールドスリープに入ることを決意する。機械の故障で、1300年後に目覚めたロミは、自分たちの子孫が巨大な町を築いていたことを知る。女王となったロミだが、いつしか地球へ帰りたいと思うようになり、心優しい少年コムと共に、故郷を探す旅に出る。
制作は「海獣の子供」のスタジオ4℃、監督に、「鉄コン筋クリート」「バッドマン ゴッサムナイト」の西見祥示郎、キャラクターデザインは、「サマーウォーズ」「バケモノの子」の西田達三。美術監督に、「漁港の肉子ちゃん」の木村真二。音楽に「思い出のマーニー」の村松崇継。現代最高のクリエイターが結集し、不朽の名作を映画化。
11月3日(金)全国ロードショー。

キャスト:宮沢りえ 窪塚洋介 吉田帆乃華 イッセー尾形
監督:西見祥示郎
音楽:村松崇継
原作:手塚治虫「火の鳥」(望郷編)
プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/hinotori-eden/

← この連載をはじめから読む

2023.11.02(木)
文=菊地陽子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=佐藤修司(Botanica make hair)