プーさんと菊池寛
門井 「女学校出は生意気」と言われていた時代に、社長の菊池寛は会を発足させ、支援しました。まだ社会全体が知的なものを女性に求めていなかった時代。そうした時代背景のなかで「文筆婦人会」の業務は画期的なものでした。
ただ、現実には時代を先取りしすぎていて事業としては成功せず、会は数年後に自然解散のような形になってしまいます。それでも、「文筆婦人会」が日本の出版史に多大な影響を与えたことは間違いありません。
それが冒頭の話の、石井桃子と『クマのプーさん』を出合わせたことですね。
門井 犬養家との交流のなかで石井が出合ったのが『クマのプーさん』の原書(編注:より正確には、『プー横丁にたった家』の原書『The House at Pooh Corner』)でした。犬養家の子供たちが、英文科出身の石井に訳しながらの読み聞かせをせがんだそうです。本に感銘を受けた石井はその後、翻訳書を出版。石井訳は現在でも岩波少年文庫で版を重ねていて、読むことができます。
終生、男性一般には手厳しかったと言われる石井ですが、菊池寛のことを話すときは表情が和らいでいたというエピソードが残っています。
2023.04.20(木)
文=第二文藝編集部