有働 その日の客席の様子をみながら計算して動きや表情を作ることはありますか。
大地 計算しないです。客席からドカンドカンと笑いが来る日もそうでない日もありますが、お客様の体調や年齢層は毎回違いますから。マスクをしていても、大きな笑い声が起こらなくても、十分楽しんでくださっている時は感じ合えるもの。だから一番大事なのは、演じる人物がそこで息づいているかどうか、なんです。
有働 役が生きているかどうか。
大地 そうですね。お客様のウケ方に左右されるより、自分を俯瞰して、終演後「明日はあの場面をもう少しこうしてみよう」という感じで反省点を探します。
20年間で615公演
有働 昼夜で2公演ある日もありますよね。
大地 私は1日2回の公演と思わずに、1回公演が2つあると考えるようにしています。自分も役も鮮度を保てるよう、生まれたてだという暗示を自分にかけるんです。
有働 自分の中で昼の続きじゃなく、夜はまたゼロから役のその人が歩き出すような?
大地 そうです。そうでないと、『マイ・フェア・レディ』を20年間、615回も新鮮な気持ちでできなかったと思います。
有働 1990年から2010年まで主役のイライザを演じた、大地さんの代表作ですね。
大地 舞台ってお客様も私たち俳優もスタッフも人間で、全員で初めて作る空間を共有しているものなんです。だから同じことは絶対にないし、惰性で同じようにやりたくはない。回数を重ねると、慣れが生じるのを一番警戒します。ちょっと緊張感を上げて、でも気楽にやっているふうに見せたいんです。
「愛はあるんか?」製作秘話
有働 コメディエンヌの真骨頂が舞台以外で発揮されているのが、2018年から出演されているCMです。「そこに愛はあるんか?」は一度聞くとつい真似してしまいます。
大地 あのフレーズはプロデューサーが考えたんです。インパクトがありますよね。
有働 大地さん演じる老舗料亭の女将が、車掌とか和尚とか現代文講師とかに変身していくシリーズが、毎回おかしくて。短い時間に面白さやインパクトを凝縮するのは舞台とは全然違いそうですが、アイデアをたくさん出されるそうですね。
2023.03.20(月)
文=大地 真央,有働 由美子