ベスト・オブ・ちょんまげ発表
さて、気楽になったところで「ちょんまげ大賞」の発表である。時代劇のなかでも、様々なハードルが課せられるのがサムライ役。刀も重いだろうし馬も乗りこなさねばならないし、合戦シーンでは全身に矢も浴びねばならない。
しかしなにより、ちょんまげのヅラをさりげなく着用しないといけない。これは本当に大変だと思うのだ。デコを全開にし、左右の髪は後ろでまとめ、小さく上に向けて結ぶ。場合によっては真ん中に、モーセの海を割る奇跡の如しハゲが通る。なんと難易度の高い髪型なのか――。
ということで、今回は独断と偏見で、その全条件をクリアした20~50代で「ちょんまげ俳優神7」を挙げてみた。今後もガンガン時代劇を牽引してほしい!
タイムトラベラーレベルのちょんまげ賞 中村獅童/片岡愛之助
歌舞伎役者ということを考慮に入れずとも、顔つきが黒船来航以前な2人。「鎌倉殿の13人」で、出てくるだけで乱世の空気を醸し出していた中村獅童。そして「実は私、江戸時代からきたタイムトラベラーなんです」と彼に言われても、驚かず「そうだと思った」と聞き流してしまうだろうレベルの片岡愛之助。この2人は、もはやオーラがちょんまげを結っている。時代劇の要としてあらゆる作品に出ていただきたい。
ミステリアスちょんまげ賞 山本耕史
何を考えているのかさっぱりわからない武士を演じさせると、右にも左にも出る者はいない彼。テレビドラマ「大奥」でも色気と謎を振りまいていた。あらすじを知っているのに、山本耕史が登場すると、その”たくらみフェイス“にオロオロしてしまう恐ろしい存在感。
戦闘力高過ぎちょんまげ賞 岡田准一
武闘系ちょんまげの星。大河ドラマ「どうする家康」の織田信長役は特に、眼力だけで数百人睨み殺せそうな勢いで、むちゃくちゃ怖い。将来、演じるだけでなく殺陣指導の欄に彼の名が出る予感もしている。
軍師もバカ殿も自由自在の極端ちょんまげ賞 妻夫木 聡
アカデミー賞の常連でもある実力派だが、ちょんまげ俳優としての彼はさらに奥深い。知的さを前に出した映画『決算!忠臣蔵』での軍師役もいいが、私は『清須会議』でのバカ殿を推す。陽に振り切ったときの、一点の曇りもない彼の笑顔は凄まじく、それにちょんまげが合わさると、猛烈に面白くなるということを三谷幸喜が証明した。
若ちょんまげ賞 中川大志
もしも「現代の芸能人一人だけを選んで過去に送り込み、織田信長を超える人気者にさせる」というミッションが闇の組織によって発令され、「誰か推薦してくれないか」と依頼が来たとしたら、私は迷いなく彼を推すだろう。あの見事な若武者ぶりをリアル侍にも知らしめたい。そう思ってしまうほどの演技と立ち姿。また観たい!
ベストちょんまげ賞 上地雄輔
決して時代劇の出演作は多くないが、40代俳優の中で、一番ちょんまげのヅラが似合う男と言いきってしまおう。ヅラをひとたび被れば、その昔バラエティでおバカっぷりを発揮していたとは思えない、すさまじい軍師の品格よ。映画『超高速!参勤交代』『のぼうの城』は必見。この2作でじゅうぶん、上地雄輔が持つ、無限大なちょんまげ俳優の可能性を感じられる。
【別枠・殿堂入り】ちょんまげ・オブ・レジェンド 野村萬斎
「神7」とは別枠。ちょんまげを語るうえで、この人を素通りできるのか? 否――ッ‼ 「どうする家康」の今川義元役で気焔を吐いている野村萬斎。平安から戦国まで自由自在に行き来し、式神を操る妖術まで会得している気がしている。彼と真田広之が対決した2001年の『陰陽師』、いつでも地上波放送待っています!
2023.02.28(火)
文=田中 稲