これからの私と舞台のために

――カリンカはデビュー10周年を機に立ち上げられたソロプロジェクトですが、始めるきっかけを教えてください。

 カリンカは元々「私はこれからも舞台で頑張っていくぞ!」という決意表明だったんです。

 10周年という節目のタイミングで「何か新しいことに挑戦したい」と考えていた時に、鴻上尚史さんや小沢道成さんといった尊敬する先輩方に背中を押していただいて。改めて舞台にしっかりと向き合おうと決意しました。

 そのために新しい橘 花梨の姿をお見せしたいと考えました。私が童顔だったり、声が幼いこともあって、似たようなキャラクターの役柄のオファーが多かったんですね。元気いっぱいで可愛くて、ちょっとぶりっ子みたいな。その当時は「私はもっといろんな役が出来るぞ!」と大きな声で言いたくて(笑)。これまでやったことのないような役に挑戦してみようと。

――1回目はひとり芝居、2回目、3回目はキャストもオファーしての開催になります。

 最初はひとり芝居をやってみたいと思って。そうして迎えた1回目の公演は手ごたえもかなりありました。小さい劇場ではありましたが、チケットも完売。その時のやりたいことはやり切ったので、次はまた新しい挑戦をしてみたいと思って、プロデュースみたいなこともやってみよう、みたいな。

――今はコロナ禍もあり、舞台や小劇場の公演自体、向かい風が吹いているような状況と言えるかもしれません。そんな中、自身が主宰で公演を打つというのは冒険とも言えると思います。

 いろんな人に言われました。「なんでやるの?」「今じゃないんじゃないの?」って。そう言われるたびに「うるさーい!」って(笑)。確かに、お金のことだけを考えたらそうかもしれません。公演がコロナで中止になったりしたら、もう大変なことになりますし。

 でも、カリンカというプロジェクトを立ち上げたことで、自分自身の役者としての幅が広がったり、プロデュ―スについて学べたり、お金では手に入らない貴重な経験ができました。カリンカをやることで新しい世界への扉が開いていく実感があったので、やらないという選択肢はなかったです。

――不安を感じて立ち止まっているより、前に進んで行きたい?

 そうですね、私自身にとってももちろんそうですし、協力してくれるみなさんにとっても、挑戦の場、新しいコミュニケーションの場になってくれると信じています。

 例えば、普段は劇団普通では音響を演出で使わないし、客入れ(舞台が始まる前の時間)の音楽も無いのですが、今回の公演では、音響の相談もしてみました。石黒さんも普段はしない取り組みを面白がってくれていますし、お互いにとって意味のある公演になるといいなって。

 そういう挑戦を続けていくことが、普段舞台を観に来ない人が舞台に興味を持つきっかけにつながると思うし、ここまで私を育ててくれた舞台や小劇場界への恩返しにもつながると思うんですよね。

 石黒さんはもちろん、出演者の方々、スタッフの方々、みんなが魅力的な人ばかりで作った、とっておきの舞台。ひとりでも多くの人に観てもらえると嬉しいですね。

橘 花梨(たちばな・かりん)

1993年9月30日生まれ、東京都出身。2008年、月刊オーディション「イトーカンパニー夏特オーディション」にて合格し、芸能界入り。近年の主な出演作に果報プロデュース『あゆみ』、劇団競泳水着「グレーな十人の娘」などがある。

カリンカ
『日記』

日時 2023年2月22日(水)~2月28日(火)
会場 OFF・OFFシアター
所在地 東京都世田谷区北沢2-11-8 TAROビル3F
時間の詳細は下記HPをご確認ください
作・演出 石黒麻衣(劇団普通)
出演 石井由多加 贈人 ザンヨウコ 用松亮 Q本かよ 森田亘 橘花梨
料金 前売 4,000円、当日 4,200円
http://karin-ka.jp/

2023.02.19(日)
文=CREA編集部
写真=今井知佑