「時間よ止まれ」、「RIDE ON TIME」、「揺れる想い」……。誰でもいちどは耳にしたことがあるフレーズで、商品とともに人々の記憶に残ったのが「CMタイアップソング」です。民放の放送開始から70年の今年、CMタイアップソングの名曲を、音楽評論家のスージー鈴木さんが選びました。


資生堂とカネボウによるCM対決の盛り上がり

 筆者は、音楽評論家でありながら、元々は広告代理店・博報堂の社員でした(一昨年末に退社)。そのため、CMタイアップソングの語り部としては、かなりの適任ではないかと勝手に思っています。

 と、調子に乗りつつ、さっそく話を進めると、「CMタイアップ」という手法、実は、日本でテレビCMが始まった頃には存在していなかったのです(ちなみに今年は民放のテレビ放送開始からちょうど70年)。

 では日本CMの黎明期・勃興期において、CMにはどんな楽曲が流れていたのでしょう? それは「コマーシャルソング」、略して「コマソン」です。

 純粋にそのCMのためだけに作られた楽曲、つまり、それそのものがレコードなどで販売されることのない楽曲――といっても話がまどろっこしい。つまりは「♪この木なんの木~」とか、「♪チョコレートは明治~」のような音楽のことです。

 ざっくり昭和40年代までが「コマソン時代」。しかし昭和50年代に入って、新しい潮流が出てきます。それが「イメージソング」、略して「イメソン」で、これが今でいう「タイアップソング」と同義となるもの。つまり、

・CMのバックで、ある音楽(ほとんどが新曲)を流す。
・CMで使われた楽曲が、レコードやCDで販売される。
・CMのオンエアと楽曲のヒットの相乗効果で、話題が広がる。

 一説には1975年、りりィ『彼女はフレッシュジュース』という曲が資生堂の口紅のCMに使われたのが、本格的なCMタイアップの端緒となるのですが、それ以降、主に資生堂とカネボウによる化粧品CMから普及し、1990年代には、いよいよ「CMタイアップ全盛期」を迎えます。

 では、ここからは「日本CMタイアップソング、勝手にベスト5」と題して、それぞれの時代を彩ったタイアップソングの名曲を、時代順で見ていくことにしましょう。

2023.02.05(日)
文=スージー鈴木