本作は「青雲編」とあり、梯結子の一生を描く構想らしい。女性の一生といえば朝ドラだが、作者はわざわざ朝ドラに言及し疑問を呈しているから、エクストリームな朝ドラ的小説だ。
結子はやがてビジネスの世界で活躍するに違いない。つまり女性の一代記にして、ビジネス小説。多彩な作品を書いてきた恩田陸にとっても初めての試みだろう。語りの中に、同時代人としての視点も織り込み、個人と社会の関わりを描いた物語になりそうだ。続篇を鶴首して待ちたい。
おんだりく/1964年、宮城県生まれ。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞、17年『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞を受賞。
タカザワケンジ/1968年、群馬県前橋市生まれ。写真評論家、書評家、ライター。著書に『挑発する写真史』(金村修との共著)。
2022.12.22(木)
文=タカザワケンジ