木のぬくもりに包まれ、移りゆく瀬戸内の景色をただ眺めることの贅沢さ。船上の時間に彩りを添える美食でのもてなしと、瀬戸内の日常に触れる旅。


移りゆく多島美を愛でる瀬戸内に浮かぶ上質宿

◆guntû(ガンツウ)[広島・尾道]

 刻一刻と表情を変える、穏やかな海と連なる島々。ほかに類を見ない多島美と、そこで育まれる豊かな食材、四季を通じて穏やかな気候は瀬戸内のなによりの魅力。

 その醍醐味を心ゆくまで味わうことができる、動くスモールラグジュアリーこそ「ガンツウ」だ。

 旅の始まりはガンツウが停泊するマリーナを一望のもとにするラウンジでのチェックインから。

 大きな切妻屋根が印象的なシルバーの船体は上質な和の宿を思わせ、日本の美意識に寄り添う。

 漆喰と大理石のミニマルなエントランスを抜け、3階には縁側、ラウンジ、オープンデッキといったパブリックスペースが広がる。

 建築家・堀部安嗣による栗や檜、杉といった木材をふんだんに使った空間は端正で、瀬戸内の島々の景色がなければ、ここが船上であることを忘れてしまいそうになるほど。

 19ある客室も同様。大きく切り取られた窓から船首を独占する眺めを備えたザ ガンツウスイートから、テラススイートまで4タイプある客室はどれも木のぬくもりを感じさせ、旅館さながらのくつろぎを備えている。

 その印象は出航してもなお変わらない。10ノット(時速約18.5キロ)で滑るように進む船は、ほぼ揺れることなくとても静か。

 コンパクトな客船ゆえ、陸上との距離も近く、時に人々の暮らしも感じることのできる眺めは瀬戸内海クルーズならでは。

 エクスクルーシブな上陸体験も加わり、船内外ともに瀬戸内を堪能できるのだ。

2022.09.07(水)
Text=Mako Yamato
Photographs=Takashi Shimizu

CREA Traveller 2022 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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