じゃあ、何を変えたら楽になるかなと12月中はずっと考えて、タクシーに乗ってみたりしたけど、当然タクシー代がかさんだりで。
それで「なにやってるんだろう。どうしたらいいんだろう」と思うようになりました。自分のライフスタイルだと、真鶴で暮らすことってちょっと難しいのかなって思い始めてきて。
ーー東京に部屋を借りて、二拠点生活にする考えなどは。
アンナ ありましたけど、「それじゃあ東京の家を引き払った意味ないよね」ってところに結びつくし。あと、真鶴の家をあっちもこっちも直している状況だったから、お金がどんどん出ていくんです。
真鶴が嫌とかじゃなくて、地域格差というんですか、東京での“当たり前”がない。病院も熱海か小田原まで行くしかないから、ママも不安になってくる。地元の人に会うたびに「病院、どこかいいとこない?」って、うちのママが聞きまくるわけ。
それに、ワンちゃんもいるじゃないですか。動物病院もひとつじゃダメなんですよね。うちには特殊な病気をやっている子がいて、その専門病院にも行かなきゃいけなくて。
東京で普通にやってきたことが普通にやれない不便さがありました。実際に真鶴で生活してみたら。
ーー前回の取材で真鶴の家にお邪魔した際、大前提として車がないと大変な環境だろうな、とは感じました。
アンナ バスも循環してるけど、家はものすごい坂の上にあったので。
昨年、私の会社の登記のために法務局に行った際も、東京だと区役所や法務局は1か所に固まってるけど、真鶴は役場から1時間かかる二宮というところまで行かないといけなくて。
真鶴の役場もお昼の12時になると、パッと電気が消えて役場全体がお昼休みモードになるんです。そういう光景って東京にいる時には見たことなかったから衝撃で。
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ーーそうした部分も“のどか”なのかもしれないですけど。
アンナ のどかですごく素晴らしいところだし、気持ちもいいんだけど「これだけ東京と違うのか」っていうのを感じてしまったことで、どんどん気持ちが。それに、正直、真鶴にいると自分が取り残された感はありました。ずっと窓から海を見ていても静止画みたいだから、自分まで止まっちゃうんですよ。
2022.09.11(日)
文=平田裕介