――どの作品を描いているときに、その気づきを得ましたか?
高橋 『めぞん一刻』です。具体的にどの巻のどの笑顔だったかは覚えてないですけど、ヒロインが最後のコマでニコッと笑ったときに「ああ、これだ……!」と感じました。
「シリアス短編を描き始めた頃は、ギャグを入れる案配がわからなくて…」
――7頭身のキャラでギャグをやるのは、デビュー当時の高橋作品の特長です。近年はシリアスな作品を描かれていますが、たとえば『MAO』でも、コメディリリーフとしてちょいちょいギャグが入ってきますよね。
高橋 シリアス短編を描き始めた頃は、ギャグを入れる案配がわからなくて、「ここでボケたらダメでしょ」ってところで、背景にギャグを入れるような過ちを犯していました(笑)。最近は経験があるので、さすがにその案配はわかってきましたけど。
――わりとボケたくなっちゃうことがある?
高橋 けっこうあります(笑)。
――その「案配」は、どのように判断を?
高橋 ストーリーに緩急をつけるというか、あまりにもシリアスな展開が続くと、読んでいても疲れちゃいますからね。場が和むというか、ちょっとホッとする場面があると、また読んでもらえるかな、と。そこは本当、間合いを測りながら。ボケちゃいけないところではボケない。『MAO』に関しては、ヒロイン(菜花)のキャラクターがそういったゆるいところを担当することが多いのですけど、それは菜花のパーソナリティだからですね。
――スムージーを飲んだときの菜花のリアクション、いいですね。
高橋 あれはストーリーに関わるネタではあるんですけど、ちょうどボケにも使える。ヒロインのキャラクター性を描くにあたって、お得な小道具ですね。
「作品というのは、終わったら終わるんです」
――今回のアニメ化をきっかけに『うる星やつら』に触れる読者もいると思います。たとえば新規の読者から「続きが読みたい」という要望があったら、続きを描く可能性はありますか?
2022.08.08(月)
取材・文=加山竜司
撮影=杉山拓也