隈 研吾氏の転機となった伝統芸能を繋ぐ舞台建築

◆伝統芸能伝承館 森舞台
[ 設計:隈 研吾、設立:1996年(宮城) ]

 木や石といった自然素材を用いる建築家の代表格である隈 研吾氏に影響を及ぼしたのが「森舞台」だった。

 バブル崩壊後、鉄筋コンクリート全盛の時代に疲れを感じていた隈氏は、森と調和させる木造建築に携わることで木の魅力に気づかされたという。

 宮城県登米市に約300年前からある登米能(とよまのう)は、秋祭りなどの地域行事で親しまれており、文化を繋ぐ目的で能舞台を作ることになった。

 1996年、設置場所を入念に探し竹林が生い茂る敷地に地元のヒバを用いた開放的な野外ステージが生まれた。

 舞台と見所(客席)の間は通常、白玉砂利を敷くが、黒い砕石にし夜能の際に暗闇に沈む竹林との繋がりを大事にしたとか。

 舞台の顔となる鏡板の絵は日本画家の千住博氏が手がけ、彼にとっては天然の岩絵具を用いた初めての作品となった。名匠たちの新たな挑戦の場となった森舞台。

 登米能の伝承や地域の集いの場所としての役割を果たし、味わい深く年を重ねている。

伝統芸能伝承館 森舞台
(でんとうげいのうでんしょうかん もりぶたい)

所在地 宮城県登米市登米町寺池上町42
電話番号 0220-52-3927
開館時間 9:00~16:30
休館日 無休
料金 200円
http://toyoma.co.jp/facilities-densho/

撮影=嶋崎征弘(伝統芸能伝承館 森舞台、マルホンまきあーとテラス)、志水 隆(青森公立大学 国際芸術センター青森、土門拳記念館、鶴岡市立加茂水族館)、佐藤 亘(こども本の森 遠野)