よしなが 実はあの2人の関係が一番ファンタジックですよね。突然スーパーで「スイカを分けましょう」と声をかけられて友達になることはまずない(笑)。

宇垣 出てくる料理を実際にいっぱい作っていて。昨日、牛肉が安かったので佳代子さんのローストビーフを作って、今煮汁につけてあります! 副菜も含めて献立通りに作ることも多いです。手順が描いてあるので、1回読んで頭にいれてから作るとすごく手際がいい人みたいになって嬉しいんですよね。

「食べ物を描く時だけ安心できるんです」

よしなが ありがとうございます。1人暮らしで自炊されているのはすごいですね。食材を使い切るのが大変じゃないですか?

宇垣 はい。使い切るために同じものが続いたりしますね。よしながさんの漫画に出てくる食べ物はとにかく全部好きです。『大奥』を読んで、うなぎも食べに行きました。

よしなが 漫画を描いていて自信が持てない時も、食べ物を描く時だけちょっと安心できるんです。食べるのが好きな方は引っかかってくださるかもしれない、と。

宇垣 読んでいて、本当によしながさんが食べることがお好きなのが伝わってきます。『愛がなくても喰ってゆけます。』(太田出版)の中で「あたしがこんだけ食い物に人生を捧げてきたんだから食い物の方だってあたしに少しは何かを返してくれたっていいと思うの」というセリフがあって、「私もそう思う!」と(笑)。

よしなが 本当に返ってくるんですよ。物事の結果はその人がその事についてどれだけ考えてきたかに比例すると思っています。私は食べたことのないものを夢とか想像で味わったことがありまして……友達が隣で食べてきたものを解説してくれて「ふんふん」と聞いていると、100分の1ぐらい味がしてくるんです。

宇垣 すごい!

『美味しんぼ』に出てきたムカゴの味

よしなが 子供の頃『美味しんぼ』に出てきたムカゴを夢で食べたこともあって。大人になって実際に食べたら、夢で食べたような味でした。

2022.01.25(火)
文=門倉 紫麻