日本全国、その土地だからこそ生まれる工芸品。

 古くから愛されてきた工芸品は不思議とその見た目も愛らしいもの。お土産にもぴったりです。CREA編集部員が見つけてきたその土地ならではのお土産を紹介します。


会津若松市「会津絵ろうそく」

 「会津絵ろうそく」は白い和ろうそくに季節の花などを描いたろうそくのことを言います。会津だけでなく、京都や新潟、山形などさまざまな地域で作られています。

 現在、一般的に販売されているろうそくとは異なり、和ろうそくは室町時代から作られてきた伝統的なろうそくのことを言います。和紙にイグサの髄を巻いて作った芯にハゼノキや米ぬかから採った蝋を固め、作られます。素材の全てが植物由来であることも特徴です。

 会津では、600年ほど前、室町時代から和ろうそくが作られるようになったと言われています。当時の領主・芦名盛信が漆の栽培を推奨し、漆器作りの副産物として漆の実から木蝋を採取し、作るようになったことから始まっています。ひとつの工芸品がまた別の工芸品を生み出す。会津の土地と歴史が育んだアイテムなのです。

 そんな会津の和ろうそくに絵付けがされるようになったのは、誕生からしばらく経った、会津藩主・蒲生氏郷の時世。会津の商工業発展のために、ろうそくへの絵付けが命じられたのです。

 色とりどりの花が描かれた会津絵ろうそくは、瞬く間に評価を上げ、会津藩の貴重な財源の一つとなりました。参勤交代の際に献上品として「南天と福寿草(難を転じて福となす)」が描かれた絵ろうそくを献上したところ、時の将軍綱吉公に大いに喜ばれたとも言われています。

 雪深い北国の冬には、お花の代わりに四季折々の花が描かれた絵ろうそくを飾る習慣が伝わり、広く民衆にも使われ、愛されていたのです。

2021.12.02(木)
文=CREA編集部
撮影=山元茂樹