《東京》たぬき煎餅

 東京・麻布十番にある「たぬき煎餅」は1928年創業。1932年には貞明皇后(大正天皇の皇后)による注文があり、初めて皇后陛下に商品を納めるため、創業者である日永圓蔵氏は知人の画家・村上玉嘉に狸の絵を描いてもらい、その絵に自らの書を添えて包装した。この狸の絵が現在も使われているロゴである。昭和40年代から使用されている写真の贈答用の缶に描かれた、小躍りするゆかいな狸たちも村上玉嘉によるものである。

《東京》榮太樓總本鋪

 1818年、江戸時代に創業した「榮太樓總本鋪」。中でも有名なのはやはり飴。そしてその飴が入った、コイン状のものがないと開けられない独特の缶だろう。2018年、創業200周年を迎えた記念に作られたのが、日本橋の代表的なイメージである歌川広重の「東海道五拾三次」の中にある「日本橋朝之景」と、現代の浮世絵画家NAGA氏による近未来の日本橋の姿を描いた2つの限定缶である。

《静岡》山一園製茶

 缶を包む和紙は、沖縄を代表する伝統染物「紅型(びんがた)」の影響を受けたイラストを手がけるコジーサこと尾崎ひさの氏によるもの。日本一の茶処である静岡から見える富士山とそして宝永山、静岡茶の栽培にとって命とも言える大井川が描かれている。なぜか見ているだけで和ませる力がある不思議な缶。

 

《愛知》一隆堂

 山吹色の缶に茶色いたぬきという、ミニマルデザイン。それだけにどこにあっても目を惹く。「一隆堂」は、徳川家康が生まれた愛知県岡崎市にある。そのため“たぬき親父”と言われた家康公をモチーフに、2012年店舗改装記念としてこの缶を作った。あまりに愛らしい征夷大将軍は人気となり、今では定番品となった。

《三重》日の出屋製菓

 創業64年になる湯の山温泉名物「湯の花せんべい」。このエポックメイキングな缶は、デザイナーではなく創業者であった現店主の祖父と印刷会社の担当者がデザインを手がけた。祖父はなぜかピンクを使用することにこだわったという(家族も理由はわからないらしい)。これが1950年代に生まれた奇跡。

2021.11.07(日)
文=中田 ぷう