宝塚は応援してきてよかったと思わせる率No.1エンタメだと思います

――この先、どんなものを創りたいのか、構想のようなものはすでにあるんでしょうか。

 単に演出だけじゃなく、プロデューサー業もできたらというのは当初から考えていることです。

 ひとりひとりの演者をプロデュースするような作品を創りたいんですよね。

 在団中、自己プロデュースしなきゃダメなんだって覚悟を決めて進んで行けるようになるまで、私は数年かかりました。

 でもせっかくならば、入団1年目から、カウンセリングのような形で適材適所にアドバイスできたらいいなって思うし、そういうきっかけになる作品を創れたらと思っています。

 あと、これはかなり個人的な気持ちですが、在団中、下級生の面倒も見ながら、高い実力で舞台にもすごく貢献されてきた方々っていらっしゃいますよね。

 でも、そういう方々に対して、退団後のケアがあまりになされていないと思うことが多いんです。

 自分はもともと組織からはみ出ている存在でしたから、そうやって組織から必要とされ、大切にされてきた方々のことをすごく尊敬しています。

 それだけの力を持った方々ですから、もうちょっと周りのケアがあれば、外の世界でもすごい力を発揮できるはずで、何かの形でそのお手伝いができないかと思っています。

 素晴らしい人材が、世に放たれてますよ、と。

 そのためにも、いつか創り手として宝塚に関わりたいというのはひとつの夢ですね。

 劇団や組に対して、武士のような志で身を粉にして忠誠を尽くしている人たち……そういう人が、「私はこれができるんだ!」って明確に自覚して、それを武器として備えさせてから送り出せるようなことが作品を通じてできたらいいですね。

――いま多くの人が、エンターテインメントの役割を模索しているところだと思います。天真さんは、舞台というエンターテインメントの持つ力やその魅力、役割についてはどのように考えていますか。

 いまって、SNSを通じてタレントさんにコメントを送れたりと、演じ手と観客の距離感がだいぶ近くなってきています。

 でもだからこそ、自分でチケットを買って、その日のその時間を空けて、劇場に足を運んで席に座って観て、感動して帰るっていう、仮想空間ではない生のエンターテインメントの強さを感じるんですよね。

 今、映画も早送りして観るという人がいるなかで、早送りせずに座って観るってすごいこと。

 でもだからといって、そこに胡座をかいていいわけじゃない。どうしたらキャスティング以外の、ストーリーやいろんな要素で作品自体に興味を持ってもらって、観に来てもらえるかを、しっかりと考える必要があると思っています。

――あらためて、宝塚の魅力も読者に向けて教えていただけますか。

 宝塚って、大きく言えばアンサンブルとスターの線引きがない世界だと思っています。

 いまはアンサンブルでも、なかにはその後スターに成長する生徒もいるし、舞台にいる全員が役柄を問わず同じ熱量を持って舞台に立っていて、自分だけのスターを見つけられるんです。

 そして、作品や演じる役を通して、個々の舞台人としての成長物語を同時並行で観ることができるんです。

 一般的な舞台公演だったら、あまりに歌唱力が低い人には歌の場面を与えないということもありますけど、宝塚の場合、将来有望なスターにはそれでも敢えて歌う場面を任せたりもするわけです。

 そういう人が、退団公演に銀橋(※注 舞台前方のオーケストラピットと客席の間に作られた通路状のエプロンステージのこと)ですばらしいソロを披露した時の感動たるや……。

 そこに至るまでにどれだけの努力をしたかを考えると涙が出る。

 歌のうまさや歌詞だけじゃなく、歌うその人自身のストーリーが乗っかるんですよね。

 今年の4〜5月に、『エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート』に出演させていただいたんですけれど、そこで歌われるOGの方々を観て、今の舞台にも、OGの方々のエッセンスが多分に入っているのを肌で感じたんですよね。

 人を見て歴史の厚みを感じるってそうそうないことで、100年積み上げられたものの大きさや重さを感じたし、大河ドラマ的な魅力も感じました。

 そういうなかで、若い女性たちが青春をかけて、必死に夢を追いかけているわけです。

 応援してきてよかったと思わせる率No.1エンタメじゃないかと思っています。

» 天真みちるさんインタビュー【前編】はこちら

天真みちる(てんま・みちる)

11月18日生まれ、神奈川県出身。愛称は「たそ」。2006年に宝塚歌劇団に入団。同期には、現・宙組トップスター・真風涼帆や、元花組トップ娘役・蘭乃はな、月組スター・鳳月杏などがいる。宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』で初舞台を踏み、その後、花組に配属。在団中は、観客の目を惹きつける魅力的な演技と高い歌唱力で、男女を問わず幅広い役柄を演じ、名バイプレイヤーとして人気を博した。とくにおじさん役に定評があり、’17年に上演された『はいからさんが通る』では、宝塚では難しいと思われた牛五郎役を見事に演じ、高い評価を受ける。また、劇団内の余興で披露するため極めたタンバリン芸でも注目される。’18年に惜しまれつつ退団。現在はフリーのイベントプロデューサーとして、舞台やイベントの企画・脚本・演出なども手がけている。

『こう見えて元タカラジェンヌです』

甥の財産を狙う下衆な男、モヒカン頭の用心棒、ガサツだけど気のいい角刈りの車引き…アクの強いおじさんを中心に、与えられたさまざまな役柄を深く掘り下げると同時に、自身のユニークなキャラクター性を交え、宝塚の舞台で名バイプレイヤーとして唯一無二の存在感を放っていた天真みちるさん。彼女が宝塚を目指すきっかけとなった出来事から、音楽学校受験の様子、入団後に味わったさまざまな試練を、たっぷりの笑いとともに綴った爆笑エッセイ。
(左右社刊/1870円・税込)

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「天真爛漫ショー大阪出張リベンジ」
こう見えて元タカラジェンヌです』出版記念特別編開催決定!

<企画構成・出演>
天真みちる

<特別ゲスト>
芽吹幸奈
鳳 真由

<日時>
2021年11月21日(日)
ランチ 12:30~/ショー14:00~
ディナー17:00~/ショー18:30~
※ディナーの公演時間が変更となりました。

<会場> 
10階「ザ・ボールルーム」

<料金> 
18,000円(お食事・お飲物・ショー・消費税・サービス料込み)

【ホテル阪神大阪ホームページ】
https://www.hankyu-hotel.com/hotel/hs/hanshin

2021.09.04(土)
文=望月リサ
撮影=鈴木七絵